文化芸能編  Vol.20
ウィリアム芳子さん
神奈川県横浜市出身。1969年にサンフランシスコへ。Heald Business College卒業後、Golden Gate Universityにて勉強を続ける。その後しばらくしてから、アートを専攻。そこで草月流いけばなと、フラワーデザインを本格的に学び続ける。草月流いけばな師範、AIFD(American Institute of Floral Designer)の資格を持ち、ショーやイベント、ウエディングのデコレーションを手がけるほか、サンマテオを中心にクラスを開いている。デヤングミュージアムやアジアンアートミュージアム、ファイロリガーデンでもボランティアとして毎年、作品を展示。
「絵を描くように」植物を生かしたアート
自由で斬新な表現が特徴の「草月流いけばな」。その師範としてサンマテオを中心にいけばなの教室を開くウィリアムス芳子さん。フラワーデザインも合わせて、花に触れる生活を送る芳子さんに、ベイエリアでの暮らしぶりを聞いた。
ウィリアム芳子さん

草月流いけばな師範(Yoshiko Williams)BaySpo 1135号(2010/08/20)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけは?
 サンフランシスコに住んでいた叔母に会うために、1969年に訪問したのがきっかけです。初めての海外旅行で不安が一杯でしたが、空港に迎えに来てくれた叔母の顔をみて本当にほっとしたのを覚えています。ただの旅行のつもりが、来てみたらいいところだったので、もう少し長くいたいなと思って学校に通い、結婚もして、そのままここに住んでいます。

ベイエリアの印象は?
 渡米する直前まで、東京で会社勤めをしていたので、突然おだやかな雰囲気のサンフランシスコで暮らすことになり、まわりののんびりとした様子にはびっくりしました。当時、最寄の郵便局で日本へ小包を送ろうとしたところ、たまたまだったのかもしれませんが、その時の係りの人の対応が信じられないくらいゆっくりで、まるでスローモーション映画を見ているようだったのが印象に残っています。でも今ではまわりの環境にもだいぶん慣れたと思います。

いけばなの道へ進んだのは?
 サンフランシスコの叔母がお花屋さんを営んでいたので、自然とお花に興味を持つようになったんですね。Heald Business Collegeを卒業してから、結婚、Golden Gate Universityで単位を取っていたときに妊娠、出産、そして病気になり、手術をし、その後、気持ちはお花に向いていたので、アートに変更し、フラワーデザインといけばなを勉強するようになりました。とにかく上には上があり、これで終わりということはない分野なので、今も勉強中です。好きだから楽しくてやめられません。

現在の活動は?
 サンマテオを中心に草月流いけばなを教えるかたわら、いろいろなフラワーショーに参加したり、AIFD(American Institute of Floral Designer)の資格を取ってウエディングやイベントのお花に役立てています。アジアンアートミュージアム、ファイロリ(Filoli)ガーデンなどのボランティアもしています。

草月流について
 草月流では、基礎を学んだ後にそこから抜け出して、個性やクリエイティビティを重んじるところが特長です。お花を生ける際に「絵を描くように」という言い方をするのですが、線や空間を生かして個性を表現する楽しさがあります。まさに植物を生かしたアートですね。自分で花器を作ったりすることもあるんですよ。

いけばなの楽しさは?
 植物ってひとつひとつが本当に違う表情をしています。そんな植物に向き合い、その場でそれぞれの味わいを充分に生かして創作するところが楽しみですね。ひとつとして同じ作品ができることはありません。お花との一期一会ですね。
 教えるうえでは、生徒さん達が一生懸命努力しているのに、なかなか上手になれないと言いながら、ある日突然、飛躍してのびる瞬間があるんですね。そんな時は「上手になりましたね」と素直に伝え、お互いに喜び合うんです。そんな時がとても楽しいですね。

英語で仕事をするということ
 アメリカの会社で経理の仕事をしていたことがあり、数字には得意な方でしたが、英語は苦手でした。でも、わからない時は自分のわかりやすい英語に置き換えて聞き直すと、案外、お互いにわかり合えるもので、そうやって乗り切ってきました。
 いけばなを教え始めてからは、言葉より、目から心へと伝わるので、英語が上手でなくても何とかやっていけます。

芳子さんにとって仕事とは?
 一人娘も独立しているので、今ではいけばなを教えることと、お花に関わっていることが心の支えであり、生きがいになっています。

子どもの頃なりたいと思った職業は?
 当時、憧れの職業だったスチュワーデスです。あと、学校の先生。小学生の頃、素敵な女の先生が担任でワクワクしていました。今、いけばなの先生をしているので、子どもの頃の夢はひとつ叶いましたね。あとは、生徒に感動を与えられるようになれればもっと良いのですが。

現在、住んでいる家
 サンマテオにある2ベッドルームのタウンホームです。交通と買い物の便がすごく良い所です。

乗っている車
 クラスやフラワーショーに花材や花器を運ぶことが多いので、ミニバンを運転しています。いつか、赤いスポーツカーに乗るのが夢ですが、もし実現しても、あまりりスピードは出せないのではないかしら。

休日の過ごし方
 簡単な和食が多いですが、料理を作って食べること、録画しておいたテレビジャパンを観ることが大好きで、そこからいろいろ日本の情報や知識が入って来ます。たまに美術館に行くこともあります。
 まとまってお休みが取れるときは、日本に行って草月の花展を見たり、クラスを取ったりします。ついでに買い物をするのも楽しみです。

日本に戻る頻度
 年に1、2回です。今年は例外で3月と4月に行き、11月にまた1ヶ月間行く予定です。

最近、日本に戻って驚いたこと
 電車の中などで、携帯でメールに夢中になっている人が多いこと。会話をしている人をあまり見かけなくなった気がして寂しいですね。

日本に持って行くお土産
 カリフォルニア産ワイン、ナッツ、ドライフルーツ、チョコレートなどです。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 いけばなに関連のある物のほかは、うなぎや和菓子、お茶など主に食べ物です。

日本に郷愁を感じるとき
 四季の変化にともなう、景色の美しさや旬の食べが恋しくなります。

好きな場所は?
 ウッドサイドにあるファイロリです。広い手入れの行き届いたお庭がある素敵なマンションで、日本からのお客様を時差ぼけ解消を兼ねてよくお連れします。

現在のベイエリアの生活で不安に感じること
 経済状態が悪く、雇用が安定していないので、どうしても犯罪が増えるのではないかと心配です。日本や世界中でも不安なことですよね。

最もお気に入りのレストラン
 サンマテオの「Wakuriya(和厨)」は素敵な会席料理を出してくれます。特別な日に行きます。

よく利用する日本食レストラン
 サンマテオにある「神戸や」、「Himawari」、「ゆず」等です。たまに「Sushi Sam」にも行きます。

お勧めの観光地
 サンフランシスコ、ナパ、モントレー、レイクタホ、ヨセミテなどなど。

最近観た映画
 「Inception」を観ました。渡辺謙さんも出演していて、なかなか見応えのある映画で、久しぶりのSFを楽しみました。

最も印象に残っている映画
 若い頃に観た「ベンハー」、「十戒」です。それからオードリー・ヘプバーンが好きだったので、彼女の出演した映画はほとんど観ました。

自分を動物にたとえると?
 サルでしょうか。なぜか親しみがわきません?(笑)

永住したい都市
 たぶん住み慣れているベイエリア。

座右の銘は?
 「花はいけたらひとになる」。草月流いけばなの創始者である勅使河原蒼風の名言集「花伝書」の中の一節です。生涯を通していけばなを語ったこの本は、読むたびに、その意味の奥深さにますます感動します。

5年後の自分に期待すること
 いつまでもお花に関わっていたいです。そして、いけばなの良さ、楽しさを一人でも多くの方達に伝えることができれば幸せです。いけばなをする人は長生きと言われていますが、きっと植物からパワーをいただいているのだと思います。
 私の良き理解者であった夫が亡くなってから10年になりますが、大勢の方達に支えられて、そしていけばなを、お花を続けられていることに感謝しています。

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インタビューを終えて
 お花の教室にお邪魔しましたところ、いくつかの作品を生けていてくださった芳子さん。美しい曲線や空間で躍動感が表現された作品を目の前にすると、「絵を描くように」という芳子さんの草月流のについて特徴がよく理解できました。

(BaySpo 2010/08/20号 掲載)

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