高橋 紫 DDS (たかはし・ゆかり)
東京の日本歯科大学を1989年に卒業、歯科医師として日本の歯科医療に貢献した後に、南カリフォルニアのLoma-Linda大学の歯科部でトレーニングを受け、アメリカの歯科医療に携わるようになる。患者さんとの信頼関係を深めるためにコミュニケーションを第一に考えている。
妊娠する前に虫歯は治しておくほうがよいといわれますが、 妊娠中も治療はできますか? (30代女性)
 原則的には妊娠中に歯科治療を行ってはいけないという時期はありませんが、治療のしやすい時期と応急処置に留める時期があります。アメリカでの初期は、生理があった最初の日から13週間です。9週までの胎芽期が一番、催奇形が発生されやすく流産が多い時期なので、過度の緊張をともなう複雑な治療は避け、応急処置に留めて14〜20週の中期の安定期にむし歯や歯周病の治療を行うといいとされています。28週からの後期は早産の多い不安定な時期なので、応急処置が適当だと思います。
 また、「妊娠中、赤ちゃんにカルシウムを取られて歯がダメになった」と言われる方がいますが、そんなことはありません。お母さんがとった食物中のカルシウムが消化吸収され、血中に入ることで歯や骨を作っているので、より多くのカルシウムを摂取するようにして下さい。妊娠中の口腔内の変化としては、@ホルモンのバランスが変化し唾液が粘り、食べかすが残りやすい、Aつわりの時に胃散が逆流し口腔内が酸性になり細菌が増える、などがあります。女性ホルモンの分泌が約7倍盛んになるため、それを好む細菌が口腔内に増え、歯肉が腫れ、出血するのが妊娠性歯肉炎です。歯肉炎が悪化すると歯周病になります。
 ノースカロライナ大学では、歯周病妊婦の早産や低出生体重児の発生率が歯周病にかかっていない妊婦の7倍高いという調査結果を発表しました。歯周病やむし歯を予防するには、小さい頭の歯ブラシで気分の良い時に1日数回みがくよう心がけましょう。Waterpikや糸ようじも併用して使ってください。3〜6カ月ごとの歯科医院でのクリーニングも大切だと思います。また、麻酔、X線、薬に関してですが、局部麻酔は使用量が少なく、打った部分で分解されるので胎盤を通して赤ちゃんの体内に届く心配はありません。歯科治療で使うX線は線量が非常に少ないので胎児に影響はないとされています。腫れ、発赤、熱などの感染症状の緩和に必要な抗生物質アモキシリンやペニシリン、痛み止めのアセトアミノフェン等は比較的安全とされています。
 大切なのは妊娠後に慌てないように、日頃から定期検診を受け自分の口腔内状況を把握しておくことだと思います。

(BaySpo 2016/02/26号 掲載)
有澤保険事務所

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