痛む場所を温めたほうがいいのか冷やしたほうがいいのか? 鍼灸が始まった今から5千年前には冷蔵庫やアイスパックが簡単に手に入らなかったせいなのか、伝統中国医学では患部を冷やすという治療法はあまり頻繁には行われなかったようです。鍼灸では痛みを実の痛みと虚の痛みとに分類します。押すと痛みが増す、触るだけでも痛い、というような痛みは実、押すと気持ちがいい、さすると楽になる、というような痛みは虚、であると考え、実の痛みには寫法の針を、虚の痛みには補法の針や灸をしました。
現代の痛みの分類に当てはめてみると先ほど述べた実の痛みではなんだか冷やしたほうがよさそうな気がしませんか? できたばかりの打ち身や切り傷擦り傷は上記の分類でいくと実の痛みでしょう。冷やしたら一時的に痛みが楽になりそうですね。これに対して虚の痛みはもう少し慢性的で、古傷が痛むとか、筋肉の長時間の緊張で血行が悪くなって痛む場合などです。これらは灸などで温めると楽になりそうです。
ご質問の痛みは「急な痛み(腰や膝)」ということなので急性だから実なのかそれとも古傷的にいつものあの場所がまた痛むという感じで虚なのか、もう少し詳しくお話を伺わないとわかりかねますが、急なけがや運動のし過ぎによる一時的な炎症の場合は最初の1、2日は冷やしてその後は血行をよくして回復を早めるために温める、というのが一般的な方法だと思います。
どうしても温めたらいいか冷やしたらいいかわからなければ実験してみるしかありません。アイスパックを当ててみて痛みが増すかどうか、お風呂に入って温まったら楽になるかどうか、冷蔵庫も電子レンジもある現代では5千年前に比べればはるかに簡単に実験できますね。どういう時に痛みが増したり楽になったりするのかは痛みの診断上重要な情報です。鍼灸師にお会いになる時にはぜひ身をもって行った貴重な実験結果をお持ちください。