だるい、疲れが抜けない、集中力がない、夜眠れない、食欲がない、お腹が張る、お腹が下るなどは、夏バテの典型的な症状です。ベイエリアの夏は、室内の寒すぎる冷房、外に出ると日差しが強く暑い、昼夜の温度差が大きいなど、必要以上の体温調整が要求され、それについていけないことで、暑いのに変な寒気を感じたり、寝汗をかいたり、動悸を感じたり、体の一部が熱くて一部が寒いなど、自律神経失調型の訴えも多いです。
私たちの体には本来、自然のリズムと調和したシステムが備わっており、夏場の過ごし方としては「早寝早起きをし、心持はのびのびとさせ、日中は大いに汗をかく」と、中国最古の医学書に書かれています。ところが、文明がどんどん進んだ現代の不自然な生活は、体内の自然のリズムを狂わせ、自然の環境変化に適応していく力、すなわち体内の治癒力を衰弱させています。
そこで鍼灸治療とは、夏バテに負けない本来の体を取り戻すための、電気や薬の力に頼らない「エコ医療」と言えます。たとえば、背骨の両脇には、内臓の調子を整えるツボが並び、内臓を支配している自律神経を正し、脚のすねや下腹部には胃腸の働きを良くするツボ、足首近くの冷えに効くツボ、足の裏のスタミナを上げるツボなどがあり、鍼と灸という単純な手段により、それらのツボに微細な刺激を与えることで、症状に合った治癒力を引き出し、内なる治癒力を高めようとします。
漢方薬も大変有用で、暑さにまいっているのか、過剰な寒暖の差で自律神経失調の症状に見舞われているのか、胃腸の不調による栄養不足なのか等により、または複数のパターンが同時に見られる場合には、一番前面に出ている症状から治療していく方法で選んでいきます。また漢方薬の概念の元となる食養生としては、食欲不振や胃もたれには胃腸にたまった余分な水分を排出して水分代謝をよくする「苦い」もの、疲れには回復を促す「甘い」もの、汗による体力の消耗には汗の出すぎを抑える「酸」を食に取り入れることが勧められます。
毎年夏に弱いという方は、6月ごろから漢方を服用することで、夏バテ予防をするのも賢明です。