10年以上も続いている腰痛は慢性疼痛に分類されます。慢性疼痛は身体的な要因だけでなく心理的な要因も複雑に絡み合ったケースが多く、痛いから眠れない、眠れないから疲れが取れない、疲れているから余計に痛い、痛いから思うように動けなくてイライラする、なかなか治らないことにイライラする、これらのストレスで痛みが増す、などどいった悪循環におちいりがちで急性疼痛に比べて治療はより困難になります。ですので一つの方法で一夜にして痛みが消えるということはまずありえないとお考え下さい。
レントゲンで異常がない痛みということは圧迫骨折や脊椎すべり症などの骨の異常はないにもかかわらずどこかで神経が圧迫されているということが示唆されます。鍼灸は血行を良くし炎症を抑えることで痛みを和らげます。漢方は炎症を抑えたり炎症による腫れを治したり血行を改善することで痛みを和らげます。耳ツボの刺激はおもに脳に働きかけて痛みの感じ方を減らすことで、痛いから動けない、を改善し、動ける範囲を広げることで血行の改善を助けます。
いろいろ試したが痛みが取れないということですが、いろいろな方法をどれもきちんと試すのはなかなか大変なことです。目安としてはもし漢方でしたら一つの方剤を2カ月続けてみて症状に改善が見られない場合は次の方剤を試す、といった具合に試していき最初の3つ目くらいまでで少し良さそうだというものに当たればしめたもの。鍼灸でしたら週1、2回で少なくとも5、6回試して、一時的な効果も全く無かったのかどうか。治療後2〜3日は少し良いようでしたら週2回を1カ月位続けると次第に具合の良い日数が伸びていくかもしれません。
また置き鍼といって、1ミリ以下の短い針にシールの付いたものを痛い場所や周辺のツボに常に貼っておくという方法で痛みの軽減効果が長続きする場合もあります。耳ツボの刺激は耳に磁石や短い針やツボ押し用のビーズのようなものを貼り付けて常に刺激することで効果を持続させます。
私の守備範囲外になりますが、腹横筋を鍛えることで腰に天然のガードルをしているような効果をあたえて腰痛を治したり、まぶたを手術やアイテープなどで二重にして持ち上げることで悪い姿勢を改善し腰痛が治ったという報告もあります。また心理的な要因の改善のみで腰痛が消えたという自体験を夏樹静子さんが『腰痛放浪記 椅子がこわい』で推理小説作家ならではの読者を引き込む鋭いタッチで描いています。