プラークとは、歯垢とも呼ばれ、歯の表面や歯肉との境目などに付着する黄白色のネバネバしたかたまりのことをいいます。歯垢の75%が細菌で約20%は菌の代謝物の粘着物質です。細菌の中には虫歯を作り出すミュータンス菌や歯周病菌などがいます。ミュータンス菌は、食後に食べかすの中の糖分を使い酸を作り出します。そのため歯の表面が酸性になり、カルシウムやリンなどのミネラルが歯から溶けやすくなり虫歯になるのです。歯周病菌は毒素を形成し、歯肉が腫れる歯肉炎や骨を溶かす歯周炎を起こします。さらに歯周ポケットから歯肉の中に入り込んで毛細血管から大きな血管へ、心臓へと送られ全身を巡ります。心臓に発症する細菌性心内膜炎のほとんどは口腔内菌が原因です。そして血液が菌に感染すると血栓が出来やすくなり動脈硬化、心筋梗塞を起こしやすくなるのです。その他歯垢は細菌の出すガスにより口臭の原因ともなります。
それではどのようにこれを予防するのでしょうか。プラークコントロールとは、ただ歯を磨くのではなく歯垢量を減らすことが目的です。歯垢が残りやすい場所は歯と歯の間、奥歯の噛み合わせ面の溝、歯と歯肉の境目とポケット、歯並びが悪い所、完全に頭を出していない歯、矯正器具のまわりなどです。プラークコントロールには普通の歯ブラシだけではなく、とどきにくい所を磨く先のとがった小さな頭のタフトブラシや歯間を磨くデンタルフロス、歯間空隙を磨く歯間ブラシなどの補助的清掃用具が必要になります。その他、細菌を除去するマウスウォッシュによるゆすぎや砂糖の摂取制限などがあげられます。また、歯磨き粉はフッ素入りのものがいいでしょう。フッ素は歯垢の原因となる酸の生成を抑え、溶け出した歯のカルシウムの再石灰化を促し、酸に強い抵抗力のある歯質へと改善します。アメリカで人気のあるウォーターピックはノズルから発射されるジェット水流により、歯垢、食べかすを吹き飛ばす口腔内洗浄器です。歯肉の境目からポケットの中、歯間部の歯垢をすばやく除去できます。東京歯科大学でも歯ブラシとの併用での効果が証明されました。
このような毎日のプラークコントロールと半年に一度の歯科医院での歯垢・歯石の除去が虫歯や歯周病の予防に欠かせないものといえるでしょう。