月経前症候群(premenstrual syndrome:以下PMS)とは、「月経前の黄体期に精神症状(抑うつ、不安、焦燥など)や身体症状(易疲労感、浮腫、乳房圧痛など)を発現し、月経開始と共にそれらの症状が減退ないし消失するもの」と定義されますが、その症状、期間には個人差があり、ほとんど感じない人から、ひどくて通常の生活を送れない人、あるいは寝込む人までいます。
原因は、女性ホルモンの変調によるであろうとされていますが、実のところ、原因は解明されていません。
東洋医学は、気・血・水が体内をくまなくスムースに流れていれば、痛みも痒みもないはつらつとした健康状態であるはず、と言う考えを元にしており、PMSは気・血・水の全てのバランスが乱れている状態、すなわち、血の異常「お血」、水の異常「水毒」、気の異常「気滞」「気逆」などが複合的に起こっていると考えます。
「お血」とは血液循環が滞っている状態で、頭痛や肩こり、腹部膨満感などをもたらします。月経は、実は「血」の流れによってお血を解消させるよい機会でもあり、そうすれば、お血にまつわるさまざまな症状が緩和されます。
水毒は水分のアンバランスを指し、むくみやめまい、吐き気などが生じます。気の異常は、精神的、感情的な症状の原因で、気が滞ると血流が悪くなり、また水分代謝が悪いと気が滅入り・・・とこの3つの要因はお互いに絡み合います。
気・血・水の不調の背景には心、肝、脾、腎などの臓器の活力エネルギーの不足があり、その原因は人により異なりますので、症状、問診による体質、生活背景、脈、舌診により、その人固有の原因を見つけ、対応します。
血が滞ると体全体、あるいは部分が冷えやすくなり、代謝が落ちることもホルモンバランスが崩れる大きな原因となります。全身の血液循環をよくするため、滞りのあるツボ、経絡にそって鍼治療をし、特に冷えているところにはお灸をします。薬の副作用である、むくみ、冷え、胃痛、全身倦怠感、精神的なバランスの崩れなども、全身をあたため、体の緊張を解きほぐしながら血の滞りをよくすることで解消します。
漢方薬も、その人の体質と気・血・水のどこに問題があるかを考慮し、例えば、お血が強くて体格が比較的しっかりとしている場合、気の異常がとくに顕著で体力がある場合・・・という見立てにより処方をしていきます。漢方薬は一剤でいくつもの症状に効くことが多いと言えますので、PMSのような多彩な症状が一度に出るような病気にはとても向いています。また特に症状が顕著な場合は、その症状に対して西洋薬を用いるというように、併用して治療することも可能です。