乳歯をぶつけた後に歯の変色が起こることがよくあります。すぐに起こる赤みをおびた変色は歯の神経の中の血管が破れて充血や内出血を起こしたものと考えられます。これは時間をかけて少しずつ充血が治癒するとともに歯の色が多少改善することもあります。しかし、少しずつ歯の色が黒ずんでいく場合は、外傷により血液が循環しなくなって神経が死んでしまった可能性が高くなります。ただ、神経が生きていなくても感染をおこして歯肉に膿のふくらみができたり、X線で歯根の先に膿が溜まっていたりしない、あるいは痛みなどの症状がない限り、必ずしもすぐに治療をする必要がないとされ、経過観察となることが多いです。そして自然に抜けるまでもたせることもよくあります。また外傷直後は、X線で破折を診断することはできても、神経は外傷のショックで一時的に仮死状態になって反応をみせない場合もあるので、神経のテストは後日改めて行う必要があります。状態にもよりますが外傷後すぐの診察、1週間後、6週間後、6カ月検診ごとに経過観察していくといいでしょう。
感染をおこして膿が出てきたり、内部吸収などの異常がおきたり、永久歯に悪影響を及ぼす可能性が高くなった歯は、感染の大きさや永久歯の位置により抜歯や根管治療などを行う必要性があると診断されます。それではなぜ、消極的に経過観察をして感染を起こす前に変色した歯の神経治療をしないのでしょうか。日本では積極的に変色した乳歯前歯の神経治療をするようですが、最近では神経が死んでしまって変色しているとみなされた乳歯が数カ月後に元に戻ったというケースもあるそうで、これは一度切れた血管や神経に変わる新しい血管などが形成された可能性があるということです。そのほか変色が残っている歯でも神経が生きていたりと、まだまだ研究中で歯科医療も新しく変化しつつあるようです。
お家での毎日の仕上げ磨きの時に、ぶつけた歯の歯肉に膿が出てきていないか、子供がその歯を気にして触っていないかを注意して見ておくといいでしょう。いずれにしても、歯を打った時や歯の変色に気づいたら、かかりつけの歯科医に相談して将来健康な永久歯が生えてくるようにしてあげてください。