何とかなりませんか? と聞かれると、何ともなりません、と思わず答えてしまいそうになりました。若いときに簡単にできていたことが年齢とともに難しくなってくる、私もかかりつけの先生に同じ種の質問をしたことがあります。そしたら返ってきた答えは「Alternative is short life(それがいやなら若死にするしかないよ)」でした。漢方のもととなった中医学のうち、鍼灸は約5000年前に、煎じ薬は約2000年前に誕生しましたが、その目的はなんと不老不死でした。未だにそれを達成した人はいないでしょう。化学の歴史でも錬金術というのが流行った時代があって、人々は身近にある物質をこねくり回すことで何とか金を作り出そうと努力しました。時代が進んでから金という元素を他の物質から作り出そうとするなんてバカげたことだということがわかり、化学の分野では錬金術という言葉は無駄な努力の代名詞となっています。
しかし不老不死の追求や錬金術は人類にとって全く無意味なことだったのでしょうか? いいえ、人々が錬金術に躍起になったおかげでいろいろな物質の精製法や抽出技術が生まれました。中医学や漢方はいまだに人を不老不死にはしませんが、その試行錯誤の過程から、人がより健康な生活を送り長生きするためのいろいろな知恵が生まれました。ではその知恵を使って、肌のくすみや目の下のくまやたるみに対して何かできることはないでしょうか。肌のくすみは瘀血(血の滞り)の現れと考えますので、瘀血を取り除く桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がいいといわれています。美顔鍼も血行を改善します。目の下のくまやたるみは腎虚(つまり老化)や気虚(簡単に言うと元気不足)と考えますので八味地黄丸(はちみじおうがん)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などがいいかもしれません。でも本当にあなたに合う漢方薬がどれなのかはあなたの体質全体(顔色、背格好、話し方、食欲、便通、睡眠、生活習慣、ストレスレベル、他の症状など)を考慮して当たりをつけ、実際試して試行錯誤してみるしかありません。人はだれでも年をとるもの。年をとっていいことなんか何もないと言って生きるか、今日あったよかったことを感謝して生きるか、そんなことでも老化や元気レベルは違ってくるかもしれませんね。