せっかく矯正治療で綺麗に並べあげた歯が治療前の歯列に戻りゆく現象を後戻り(英語ではrelapse)といいます。矯正治療の方法にもブラケットとワイヤーを使用するものや、マウスピースを使うタイプと色々ありますが、どの治療法にせよ治療後の歯の保定はとても重要です。矯正治療直後はまだ歯を支える歯槽骨が柔らかく、歯一本一本に付いている無数のゴムのような歯肉繊維も歯を元の位置に引っ張ろうとするので、リテーナーのような保定装置を使って時間をかけて歯列を安定させる必要があります。
リテーナーにも様々なデザインがありますが、大きく分けて歯の内側にアクリルのプレートを、外側にワイヤーを組み合わせたものや、マウスピースタイプの取り外し可能なものと、前歯の裏側にワイヤーを接着する固定式のものがあります。後戻りを防ぐには、矯正治療後の最初の半年から一年は一日中リテーナーを使ってください。徐々に歯列が安定してくるのでその後は夜だけの装着で安定する方が大半です。「リテーナーはいつまで使えばいいの?」とよく聞かれますが、リテーナーは一生使うものと思ってください。もちろん個人差はりますが、ティーンの矯正治療後、30代になって急に後戻りを起こすケースも多々あります。
では質問をいただいた様に後戻りを起こしてしまったら? とても軽度の後戻りの場合は、元のリテーナーをきつくても我慢してはめていれば、歯が元の位置に戻る場合があります。又はアクティブリテーナーという少々の後戻りを治すための装置もあります。どちらにせよ一日中装着しないと効果がありません。もっと重症な後戻りの場合は、残念ながら再治療となります。もしくは現状を維持するために新しいリテーナーを作る場合もあります。
長期間にわたる矯正治療がやっと終わって自由になりたい気分はわかります。でもせっかく努力して手に入れた美しい歯並びなので、後戻りを起こさないように日々リテーナーを頑張って使うように心掛けましょう。そして「後戻りしてしまった!」と思ったら直ちに矯正歯科医に相談してください。時間が経てば経つほど後戻りが進行してしまい、治療のオプションが限られてしまいます。