一般的に、漢方薬は優しく穏やかな効き目、そして時間をかけて効いていくというように思われているようです。たしかに、飲み続けることによって体質を変え体を根本的に改善していくという大きな利点があります。薬局で買う薬や医師がすすめる薬は、まずは症状を治すためのものがほとんどで、たとえば風邪薬というものはくしゃみ、鼻づまり、咳、のどの痛み、発熱などの症状を治すものです。ですから症状が出てから薬が選ばれるわけです。
ところが漢方薬は、症状がでる以前に飲んで治すことができるのです。たとえば風邪のひき始め、まだ悪寒がする程度のときに葛根湯なり麻黄湯なりをのみますと、発汗作用があって、その汗を出すことによって風邪の毒素を体外に出してしまうのです。ですから、実際の症状が出る以前に飲み、翌日には風邪の症状が出ずに終わるというふうに作用いたします。ただ、この際、どういう症状のときにどの漢方薬を飲めばいいかがとても大事です。
例えば、風邪のひき始めにはよく効く葛根湯ですが、数日間のどが痛み咳が出るというときに飲み始めても効かないのです。まだ風邪かはわからないが、首筋が張る、悪寒がするといった初期に飲むと効果を発揮します。ですから、1週間も葛根湯を飲んでいるのに効かない、なんていうのは、ちゃんとした服用の仕方をしていないことになります。
鍼灸でもそうですが、長く患っているものを一回の治療で治すというのは無理があります。今日起きたぎっくり腰なら一回の治療でよくもなりますが、長患いにはやはり時間をかけるしかありません。漢方もそうです。長く患っていたものに関しては、やはりじっくりゆっくり効く生薬を使います。ただし、昨日今日の胃の不調であれば安中散ですっきりするでしょうし、足がつったなんていうときには芍薬甘草湯を飲めばすぐにも筋肉は元にもどります。
いつまで飲んでも効かないと嘆く以前に、ぜひとも鍼灸師にご相談ください。今の症状にぴったりの漢方薬を選んでくれるはずです。鍼灸師は生薬を処方するライセンスも併せて持っています。
鍼灸師は脈を診て舌を診て、もちろん体全体を診て、その症状の経過から診断を出します。この方法は人間をホリスティック、包括的統合的に診ていきます。ぜひ、根本的治療に、即効性のある漢方薬を試していただきたいと思います。