ここでまず、「歯磨き」について見直していきましょう。近年ではプラークコントロールともいわれ、食べかすを取り除くだけではなく、食べかすが虫歯の原因となる菌の塊である歯垢(プラーク)にならぬよう、また口腔内常在菌を取り除き、虫歯や歯周病になりにくい口腔内環境作りをすることが目的とされています。また、米国歯科医師会(ADA)で推奨されている家庭でのプラークコントロール法には@フッ素入り歯磨き粉をつけて朝と就寝前2回に2分間ずつの歯磨き、Aフロスを用いての毎日の歯間清掃、Bヘルシーな食生活により糖分や酸の強い飲食物量や摂取頻度を減らす、C歯科医院での定期検診により虫歯予防や治療の必要性を早期確認、などがあります。
それではここで虫歯になるメカニズムを説明しましょう。食後、糖分や炭水化物、炭酸飲料などが口腔内の虫歯菌に代謝され、歯を溶かしてしまう酸が発生します。そのため、口腔内pHが酸性に傾き、非常に虫歯になりやすくなりますが、唾液により徐々に中和されて、30分から1時間で元に戻っていきます。最近の研究では、歯磨きをするのは食後すぐよりも中和後が良いとされています。これは唾液の緩衝作用を最大限に生かし、歯が一番溶け出しやすいときにゴシゴシ磨いて摩耗させてしまうのを避けるためです。そして歯磨きは乾いた歯ブラシにフッ素入りの歯磨き粉をつけ、唾液でフッ素が薄まる前に虫歯になりやすい奥歯の溝から磨いてください。フッ素は歯へのミネラルの補給を促し、まだ穴になっていない初期の虫歯を再石灰化して健康に戻す働きがあります。磨き残しの多い歯と歯の間、歯と歯肉の境目なども丁寧に磨いてください。歯茎が下って歯間に隙間ができているところは歯間ブラシ、歯茎からの出血が多い人には口腔洗浄器の併用がよいと思います。加えて、虫歯になりやすい人には歯磨き後にフッ素入り洗口液の使用をお勧めします。これは外層のエナメル質をコーティングして補強し、歯を酸から守る役目をします。
以上から、大切なのは1日2回の歯磨きおよびフロスと、間食を減らし唾液の分泌を促すためによく噛んで食べるということですね。