今回の質問者のように年齢を重ねると膝や股関節はどうしても摩耗してしまいます。関節で骨が変形し、軟骨などもすり減って関節の隙間がなくなってしまうのです。だからと言って「加齢でしょうがないですよね」と医者に言われれば患者は悲しくなってしまいます。今回のケースのように手術や投薬は避けたいという気持ちも本当によく分かります。クオリティー・オブ・ライフというものがありますので、いくら手術がいいと言われても必ず成功して楽になるという保証があるわけでもなく、術後の辛いリハビリもこの年齢になってくると厳しいものになります。
薬にも手術にも頼らず今の状態を改善したいということなのですが、考えられる方法がいくつかあります。それは、股関節の周囲の筋肉などの軟組織を緩めて柔らかくすること、摩擦による炎症で組織にむくみがあるのでそれを軽減すること、軟骨の再生のための運動をすること、それと筋力の強化です。グルコサミンのようなサプリも効果があるかもしれません。いずれもその方の年齢や健康状態を見ながら進めていくことになります。
股関節周りの筋肉はただでさえ固まりやすいので、このケースのように痛みがあって歩くのが辛い方は確実に筋組織が硬直していると思われます。それを緩めることは自分では無理でしょう。私のクリニックでは物理療法やグラストン、モービリゼ―ション、マッサージなどを使って緩めていきます。リンパ系の流れをマッサージにより活性化しむくみを取り、振動系の軟骨再生運動をやっていただきます。簡単なエクササイズや可能な範囲でのウォーキングで下半身の筋力を一定以上に保つことも大切です。それに加えて正しく歩行できているかなどのチェックと訓練も必要でしょう。その方がどこまでの回復を求めているかにもよりますが、可能な限りの回復を目指して地道に努力していくしかないでしょう。
一番怖いのは痛みや治療を怖れて何もせず待っていると歩かなくなるので筋力が低下して歩行が困難になることです。早めに治療とエクササイズを開始することをお薦めします。