日本と比べて、アメリカの医療保険は複雑です。日本の国民健康保険のように国の制度として提供されている医療保険は、Medicare A&B(65歳以上の市民・永住権保持者用)とMedical(低所得者用)の二つがあります。その他の市民は国営の医療保険が提供されないため、勤務先の会社を通して提供されるグループ医療保険に加入するか、個人用の医療保険に加入することになります。
しかし、これらの医療保険会社は国営ではないため、加入者の審査を行い、保険料を自動車保険などの損害補償保険と同様にリスク度で判断することになります。したがって、医療費が最初から高額になると予想される持病持ちの人や、保険の使用頻度の高い加入者は保険会社にとって損失が出るために、1歳までの新生児や、65歳に近い高齢者の保険料は高く設定されています。世界でも特に医療保険制度の整った日本で育ったみなさんにとっては信じられないことですが、民営だということを理解することが必要です。例えば、被保険者が毎月300ドルの保険料を支払い、国から補助を受けられない民営の保険会社が3000ドルの医療費を医療機関に毎月支払うようでは、会社を経営することができないのです。
さらに医療費も日本と異なり、法外と言うほど高額です。例えば日本では2000円で受けられるような検査が、アメリカでは100倍の2000ドルかかることもあります。風邪が治らないので、医者とアポを取り、たった10分間の問診で抗生物質を処方してもらっただけで、200ドルほどの医療費かかることもあります。これに伴い、保険会社はリスクを回避するため、高額な医療費の出費を防ごうと、独自のネットワークを作って医者や医療機関を傘下に入れ、医療費をお互いに交渉し、高額な医療費を請求できないようにしています。