低気圧が近づくと決まって頭痛がするというのは、気圧が下がることにより脳が少し腫れ、それが痛みとして現れるためです。このタイプの頭痛に悩んでいる人は結構いらっしゃいますが、頭痛分類の世界標準である国際頭痛学会の分類にはないため、現代医学では有効な治療薬が用意されていません。
漢方薬の「五苓散(ごれいさん)」は、脳の腫れをとるうえで抜群の効果を発揮します。脳細胞には水が出入りする穴があり、そこを通って細胞中に過剰に水が入ると、脳が腫れ、頭痛を引き起こします。五苓散はこの穴を閉じる働きがあるので、脳の腫れが解消されるというわけです。五苓散の効果は非常に大きく、命を危ぶむような脳浮腫さえ短期間に治してしまう効果があります。効果を上げるための摂取量も大切ですので、漢方薬処方の資格を持った鍼灸医にご相談ください。
五苓散は、東洋医学の基本概念である気・血・水のうち、体内の余分な水を排して、体のはたらきを高めるため、適用範囲は大変広く、脳の腫れによる頭痛の他にも、二日酔いの頭痛、むくみや、めまい、吐き気、嘔吐、腹痛などを伴う水様性の下痢、急性胃腸炎、眼圧上昇による緑内障、あるいは、血中の尿素窒素とクレアチニンを正常に戻し腎臓障害を予防するのにも有効です。
ちなみに、水の分子が脳細胞の穴(アクアポリン)を通って出入りしていることは、その功績でノーベル化学賞を受賞した、アメリカの分子生物学者ピーター・アグレ博士により20世紀末に発見されましたが、その発見が五苓散の作用するメカニズムに結び付きました。
このように、漢方薬にもだんだん化学の裏付けが進んでいます。