ビジネス編  Vol.66
アレン・マイナーさん
 日本オラクル初代代表として来日、後の同社の記録的な急成長に貢献。1999年、日本オラクルのIPOを機に、日本のベンチャー企業育成のため、株式会社サンブリッジを設立。クラウドコンピューティングの先駆けであるsalesforce.comの日本法人設立を手掛けるなど、数多くの日米のベンチャービジネスに対して、投資、マーケティング、技術、人材などの総合的な支援を行う。近年は、シリコンバレー、大阪梅田にもインキュベーション事業を展開し、日本の革新的なベンチャー企業を中心に、企業の国際化を支援している。ブリガムヤング大学コンピュータ・サイエンス学部卒業。
日本のベンチャーの中からグローバル企業を育てる
 日本オラクルの初代代表として記録的な成長に貢献。その後、主に日本のベンチャー企業への投資や支援を行う株式会社サンブリッジを設立し、クラウドコンピューティングの先駆けであるsalesforce.comの日本法人設立を手掛けるなど、ベンチャーキャピタリストとして活躍しているアレン•マイナーさん。投資家としての日本への思いを聞いた。
アレン・マイナーさん

Sunbridge会長兼CEO(Allen Miner)BaySpo 1183号(2011/07/29)掲載

ベンチャーキャピタル事業の醍醐味は?
 私自身もブレインストーミングをしているときが好きで、いろいろな起業家のアイデアを聞き、アイデアを出し合って、それを膨らませたりするプロセスにやりがいを感じます。投資した会社の立ち上げ、新商品の開発、年間計画のアイデアを通じて、何かを作り出すことが楽しいですね。

日本の起業家を支援しようと考えた理由は?
 サンブリッジは、シリコンバレーがインターネットバブルの絶頂期の1999年、日本で立ち上げました。私の場合は、87年から96年まで日本オラクルの立ち上げに関わっていましたから、シリコンバレーよりも日本国内での事業立ち上げの方が人脈も経験もあるんです。しかも、日本でベンチャーキャピタルができるようになったのは、日本でのオラクルの成功によって得た財産があるからなので、富を私に与えてくれた日本の社会に恩返しする意味もありました。
 当時は、「日本に投資をするような企業はあるのか?」とシリコンバレーの友人に真顔で聞かれました。日本にいたことで、日本人に創造性の豊さがあることは分かっていましたし、インターネット時代に入って、それを機会に若い人たちが独立してインターネット事業を始めているという実態もありました。日本のベンチャーキャピタルは金融業界しか経験していない人がほとんどで、シリコンバレーみたいにIT業界で働いたことがあるベンチャーキャピタリストが非常に少なかったのです。私たちがIT業界に集中した投資をすれば、日本にあるほかのベンチャーキャピタルとは違った戦略がとれ、一般の金融系投資家よりも意味あるサポートができるのではないかと思いました。

成功されてもさらに精力的に仕事ができるエネルギーはどこから?
 ゆっくり考えてデスクワーク、だとエネルギーダウンしてしまいます。ベンチャー企業とのブレインストーミング・セッションを聞いてフィードバックをする、メディアとのインタビューで意外な質問を聞かれる、社員と会話する、そういったことが私のエネルギーの源です。また、周りから「オラクルやサンブリッジで成功した人」と言われても、アンビシャスな性格ということもあり、自分では「まだまだだな」と感じています。どこかで、「もう十分やった」と考えてもいいのかもしれませんが、将来そうなるとも思えませんね。

これから先の未来には何がしたいですか?
 やり残していることは、我々が今関わっている日本企業を世界で成功させることです。サンブリッジのキーワードの一つは「日本生まれのグローバルベンチャー」です。我々の投資先の会社の中にも、日本国内での立ち上がりが早かったり、ある分野で世界の最先端を走っていた企業というのはありますが、これまでは、残念ながら日本国内での展開で終わっています。なので、日本のベンチャーの中からグローバル企業を育てることが大きな目標なんです。そのために、シリコンバレーと日本に「グローバルベンチャーハビタット」というインキュベーションセンターを作っています。

財団を持つマイナーさんにとって寄付などボランティア精神とは?
 親から教わり、子どもに伝えるものです。父が警官で金銭的には決して恵まれていませんでした。当然、金銭的な社会還元をする余裕は父にはありませんでしたが、家計を助けるために、二つ目の仕事として銀行の事務員をやらなければならない時でさえも、時間を見つけてはボーイスカウトなどの活動を積極的にやっていました。そんな父を模範として育ちましたから、金銭的な寄付のみの社会還元というのが、ある種「ごまかし」であるという考えを持っています。
 そういう意味では、今回の東日本大震災では、私の信念が家族に伝わっていることを確認できる、良いことがありました。私は、かねてから、私の子どもの頃よりもすっと裕福な環境で育った自分の子どもたちが、社会貢献の精神を果たして持てるのかどうか不安でした。ですが、小学校5年生になる私の娘が震災後、誰も何も言わないのに、被災地の写真をプリントアウトして靴箱で作った募金箱に貼付けて、近所の家を回って募金活動をしたんです。普段はもの静かで、生徒会やスポーツなどもしない子なのに、学校のクラスメートへの働きかけにも積極的でした。その後、自分のリーダーシップで、メンロパークのダウンタウンで週末にブラウニーを売るチャリティー活動をしました。結果、3300ドルを集め、私の持つ財団がマッチングドネーションをして、合計6600ドルが彼女の努力で寄付されることになったのです。娘のその自発的な行動が意外でもあり、とてもうれしかったのです。

日本語はどのように学びましたが
 1980年、19歳のときに大学を休学して、モルモン教の宣教師として北海道で2年間暮らしたときに学んだのが最初です。

日本語で失敗したエピソード
 実は、日本語で失敗した記憶はあまりありません。初めて日本オラクルのカンファレンスで大勢の前にいた時、「セールストーク」を「営業話」と訳して発言し、後でお客様から「そこはセールストークでいいんです」と言われて恥をかきましたが、それくらいでしょうか。

日本文化で好きなところ
 食文化と言ってしまう簡単ですが、食事が口に入るまでの、すべての背景とプロセスに感動を覚えます。最終的なプロの料理に対する工夫や細かさはいうまでもなく、畑での農家の方々の作物に対する配慮、流通させる時の梱包、売るときの商品の取り扱いや期限に対する管理。神戸牛も、ビールを飲ませて育てると聞いて「冗談でしょ?」と思いましたが、最高の牛肉を消費者に提供したい一心の工夫です。食材に始まり、お皿に盛られる料理までに関わる人々全員の意識の高さは世界のどこを探してもないでしょう。結果として、普通の庶民的な店に入っても美味しい料理が食べられるのです。

乗っている車
 BMWのM3です。家内がスポーツカーに乗りなさいと言うのでオープンカーにしましたが、せめて後ろに子どもが快適に座れる車を選びました。

現在、住んでいる家
 1998年、サンセットマガジンの企画で、ウエスタン・リビングにおけるドリームハウスとして設計されたメンロパークの家です。だから、初めて知り合った人に自分の家のことを話すと、「あぁ、昔その家を見に行ったことがある」と、今でも言われます。

休日の過ごし方
 本を読んだり、子どもと遊んだり、家族で出かけます。家でごろごろしていることが多いです。ふつうのオヤジですね。

お気に入りのレストラン
 おいしい日本料理ならば、サンマテオのWakuriyaを勧めます。一カ月に一回くらい行きたい気持ちがあるのですが、予約が取りにくくて、怠け者の私はなかなか行けません。

日本へ行く頻度
 仕事でほぼ毎月です。最近は、月の半分は日本にいます。

最近日本へ行って驚いたこと
 東北への震災に取り組む姿勢で、日本にはないと言われていたボランティア精神が、実は必要なときには十分あった、ということです。良い意味での驚きです。また、常に驚くのは若者のファッションですね。何年も前から驚かされています。

日本へ持っていくお土産
 ナパのワインです。当たり前すぎてつまんないですね。私としては、本当は、サンフランシスコから日本的なお土産を持っていきたい。例えば、サンフランシスコのカニせんべい、シリコンバレーなら、以前は杏とサクランボの名産地でしたから、杏入りケーキとかサクランボパイなどです。これらは実際にはないので、時々「ないなら自分でつくろうかな」と思います。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 おせんべい!

座右の銘は?
 父が言っていた言葉ですが「Leave this place better than you found it」。キャンプに行き、帰るときにキャンプサイトに着いたときの状態よりも良い状態にしましょう、ということです。つまり、自分がいたことで、必ず良い状態になったことを残すのです。日々の行いの中でも、それをよく言われていました。この世を去るときも、自分がいたことで、前よりも少し良い世の中になった、と思ってもらえるように、これからも頑張りたいと思ってます。

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■インタビューを終えて
 日本の起業家支援のために、日本とアメリカの間を常に飛び回っているのにも関わらず、精力的にインタビューに答えていただきました。アレンさんのおっしゃっていた座右の銘通り、日本オラクルの成功や数々のベンチャー企業の立ち上げなどアレンさんが残してきた業績は大きいです。現在同氏が進める日本ベンチャーの世界進出を応援したいものです。

(BaySpo 2011/07/29号 掲載)

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