一般編  Vol.232
後藤 浩治さん
プロフィール 1962年6月生まれ、瀬戸内海の島育ち(愛媛県・大三島)。防衛・広告・配達・飲食業などを経て1987年に渡米。渡米後は飲食・学校関係・ホテル・旅行業などに携わり、現在サンタクルーズにて「海人レストラン」とテイクアウト店「Sprouts Sushi Market」を展開中。
感謝をいつも心にとめておきたい
渡米後さまざまな業界の仕事を経て、現在はサンタクルーズで飲食業を営み、休日にはクラシックギターや座禅を嗜むという後藤さんに、ベイエリアでの暮らしぶりを伺ってみました。
後藤 浩治さん

(Koji Goto)BaySpo 1487号(2017/05/26)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 渡米は1987年です。きっかけは、まず当時働いていた会社が倒産したこと。そして色々な方とのご縁をいただきながら、自分の中で漠然と何かを変えてみたいという気持ちがあったことだと思います。

ベイエリアの印象
 SF空港に到着して最初の印象は、青い空と広いフリーウェイ、夏の快晴にもかかわらず暑さを感じないカラッとした空気でした。

自分の専門分野について
 飲食業です。現在サンタクルーズでレストランとテイクアウトのお店を経営しています。

その道に進むことになったきっかけ
 当初はアメリカの下見旅行の予定だったんですが、日本でお世話になっていた方の知り合いがベイエリアでレストランをされていて、旅行の日が近づいて来たころ、「働けないか?」というお話があったのがきっかけです。

英語で仕事をするということ
 いまだに拙い言語力で情けなく感じることが多々あります。しかし、たとえ母国語でも自分にその度量がなければうまく伝えられないですし、違う価値観を育んでいる人たちにはなおさらだと思います。やはり最終的には言語が違っても素直な気持ちと誠実な態度が大切なのかも知れませんね。


英語で失敗したエピソード
 失敗は現在も進行形なのですが、とにかく「R」と「V」の発音では苦労しました。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 ちょっと思いつかないです。でも、仕事もご縁だと思っているので、大切なことはどんな仕事に就くかというよりもその仕事をどうやるかということだと思っています。

あなたにとって仕事とは?
 もしも人生が1冊の問題集だとしたら、仕事は特に難しい問題に取り組んでいる大切な時間だといえると思います。ですので先ほどの答えのように、「どんな仕事を」というよりも「どのように仕事をするか」に重きを置きたいと思っています。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 小さいころはよく漫画を描いていたので漫画家だったかも知れません。しかしもう少し仕事として意識したのは、デザインとかレタリングが好きだったこともあって、やはり手で何か描く仕事だったと思います。

いまの仕事に就いていなかったら
 学生のころですが、ふと「俳優になりたい」と思っていたことがあります。すでに進路はある程度きまっていたので、もし生まれ変わりというものがあるなら、次に生まれてくる時は絶対に俳優だと真剣に思っていました。


現在、住んでいる家
 Soquelという小さな町で、以前は日本レストランだったところを借りています。居住スペースは改装しているので普通の家ですが、和風の庭には茶室があってなかなか良い環境です。


乗っている車
 VolkswagenのEurovanという車種の最後のモデルです。Weekenderという半分キャンパーのような仕様になっています。

睡眠時間
 4〜5時間です。普段の起床時間は午前5時ごろ、極力午前12時か12時半には寝るようにしています。

休日の過ごし方
 最近この歳になってクラシックギターを始めたのと、白人のお客さんで禅のお坊さんがいて、その方と庭の茶室で座禅を組んだり、あとは知り合いに誘われてスエットロッジに行ったりします。でもほとんどは店のための買い物や、店に行ってあれこれしています。サーフィンもいずれ始めたいです。


好きな場所
 アウトドアが好きなので、以前はバークレーのTilden Parkや、ミュアーウッズ、マウント・タマルパイスなどにもよく行っていました。いまはサンタクルーズが住んでいる場所で、好きな場所でもあります。


最もお気に入りのレストラン
 自分の店ということでもいいですか(笑)? 惚れ込んでいると言いたいところですが、でもそのような店でありたいですね(笑)。

よく利用する日本食レストラン
 サンタクルーズに引っ越して2年ほどになるのですが、ベイエリアが少し遠いところになりました。地元ではあまり日本のレストランには行っていないのが正直なところです。


1億円当たったとして、その使い道
 1億円ならまずは貯金でしょうか、それから夫婦で旅行に行きたいですね。もしも100億円ならちょっと話が違ってきますね(笑)。


日本に戻る頻度
 以前は毎年帰国していたのですが、今は2、3年に一度です。

日本に持って行くお土産
 最近は地元でローストされたコーヒーや地元のプロダクトです。あとはTrader Joe'sやWhole Foodsで気の利いた食べ物や小物などをお土産にします。


日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 実家が瀬戸内の島なので、地元の海産物や地元で採れた愛媛みかんを使ったジャムやドレッシングなどです。あとは店やお客さんのために最後に空港で大量に買い込みます。


現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 以前は公共交通機関が不便だと感じていたのと、夜遅くまで開いているお店も少ないと思っていました。


現在のベイエリア生活で不安に感じること
 特に不安というほどではないのですが、一般的な意味では過度な交通渋滞や家や土地の価格高騰でしょうか。


日本に郷愁を感じるとき
 四季折々の映像や写真を見るとき。茶道や華道など日本の文化に触れて外から改めてその良さに気づくとき。


お勧めの観光地
 うーん、やはり地元サンタクルーズと言わせていただきたいです(笑)。それから先日久しぶりに行ったカーメルもすごく良かったです。ナパバレーは、以前近くに住んでいたので懐かしくもありお気に入りの場所です。

永住したい都市
 これもやはり、現在住んでいるサンタクルーズです。


5年後の自分に期待すること
 今年で55歳なので、5年後ということはちょうど還暦ですね。それまでには、今思い描いていることの方向性が少し見えているといいですね。でもまあ5年後に期待することは、今日の自分に期待していることと同じだと思います。


最も印象に残っている本
 小説などではなく、詩画集・写真詩集なのですが、大好きな2人の星野さんという方々がいます。故・星野道夫さんと星野富弘さんです。アラスカを中心に北極圏の自然や野生動物、そこに生きる人々の暮らしを記録し続けた写真家、探検家、詩人だった星野道夫さんの写真エッセイ集の中で、「これまでのアラスカでの仕事を一枚の写真で示せと言われたら迷わずこの写真を・・・」というのがあって、それが夕陽の中をカリブーが川を渡っているシーンなのですが、思い出すだけで涙が出ます。詩人で画家の星野富弘さんの花の詩画集『ぺんぺん草』は、母親への思いが伝わってきて、これもやはり涙が出ます。


最近読んだ本
 つい先週オーディオブックで聴いたのは、ヘミングウェイの『老人と海』。村上春樹が小澤征爾にインタビューした『Absolutely on Music』(原題:『小澤征爾さんと、音楽について話をする』)という本を頂いて読んでいる最中です。


最も印象に残っている映画
 『Modigliani』がすごく印象に残っています。イタリアの画家モジリアーニの生涯を描いた作品で、実話に基づいた映画です。エンディングが驚きで、でもなぜか全てを肯定すべきなような気がして、モジリアーニの死後、妻にとってそのときの精一杯だったんだろう、それでもいいじゃないかと、いろいろ考えさせられました。音楽も素晴らしくて、カッチーニの「アヴェ・マリア」のアレンジ楽曲が映画をより一層引き立てていたと思います。


最近観た映画
 『La La Land』です。アカデミー賞をもらう前に、別の映画を観る予定で出かけて、時間を間違えたので、仕方なく特に期待しないで観たんですが面白かったです。


自分を動物にたとえると? なぜ?
 ハツカネズミのように落ち着きがなく、でも決断はナマケモノのように遅く、しかし夢は鷲が飛ぶように雄大でありたいと願いつつ、樹上で落っこちそうになりながら居眠りをするオラウータン、という感じでしょうか。 なぜかといえばその通りだからです。

座右の銘
 座右の銘というほどではありませんが、「感謝」の言葉はいつも心にとめておきたいと思っています。自分に最も足りない部分であり、生きていく上でとても大切なことだと思っているので。そういえば先日店の片付けをしていて、十何年も前の走り書きが出てきました。「By living with appreciation for other, you fully enjoy yourself.」というもので、なにか神様からのリマインドのように思えました(笑)。


(BaySpo 2017/05/26号 掲載)

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