一般編  Vol.244
西川 貴子さん
同志社大学法学部法律学科卒。サンフランシスコ州立大学院で日本語教授法修士号取得。現在は日本語教師として働きながら、「SUSHINISTA」のキッチンを毎日管理。好きなものは白ワイン、パン、硬いチーズ、kettle cookedのポテトチップス、バナナチップス、キャベツ、活字で勉強すること、生徒さんに会うこと、お風呂タイム。苦手なものは、虫、寒さ、ラム肉...は今訓練中。
日本に興味を持ち続けてもらいたい
大学生や社会人の方々を対象に日本語を教える日本語教師として働く傍ら、バークレーにある寿司ブリトーの店「SUSHINISTA」のキッチンを毎日管理している西川さんにベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
西川 貴子さん

(Takako Nishikawa)BaySpo 1520号(2018/01/12)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 2008年、主人の転勤にともないバークレーに住むことになりました。オバマ大統領が就任した年で、アメリカの景気が著しく下降していた時です。当初は主人が会社勤めをする間、私は地元の子供に日本語を教える仕事をしていました。アメリカ駐在が終了次第、日本に帰る予定でしたが、3年前に主人から「アメリカでレストランを出店したい」と告げられ、2年前にバークレーに寿司ブリトーのお店、「SUSHINISTA」をオープンしました。

 アメリカで、日本人として事業を始めるには乗り越えなければならない壁が多くあり大変でしたが、今ではお店の方も安定してきたので、今後の店舗拡大を目指しているところです。

ベイエリアの印象
 「カリフォルニアは暖かい」と思っていたので、住み始めて毎日が肌寒く、驚いた覚えがあります。

自分の専門分野について
 日本語教師です。平日はコンコードにあるディアブロ・バレー・カレッジで大学生たちに教えています。週末は社会人の方のプライベートレッスンを行っています。サンフランシスコの北加ジャパン・ソサエティーからプライベートクラスの依頼があった時も、できる限り引き受けさせていただいています。

その道に進むことになったきっかけ
 昔、従姉妹と将来の話をしていた時に、従姉妹が「日本語教師になりたい」と言っていて、興味深く一緒に語り合いました。そのことがずっと頭にあり、サンフランシスコ州立大学院で「第二外国語としての日本語教授法」を学び、卒業後、先輩の先生から今の仕事を紹介していただいたことが現在に繋がっています。日本でも日本語教育能力検定試験と通訳案内士資格を取得していましたが、こちらで履歴書にその旨を書いても何のことか分かってもらえませんでした。

 アメリカの大学レベルで教えるにはマスターの取得が必須であることを実感し、サンフランシスコ州立大学院入学を決意しました。大学院での勉強は予想を超えて大変でしたが、修士論文の「アメリカ人はどんな酒ラベルを好むか」という研究テーマは、大学で高い評価を得てその年のトップ10研究に選ばれ、優秀成績者として表彰していただきました。今でもご指導いただいたマキオン教授、南教授、また協力して下さった皆様に感謝しています。

英語で仕事をするということ
 日本語の文法を英語で説明…。そこには日本語で説明するのも難しいことが多々…。学生から鋭い質問をされた時に冷や汗をかいていることがよくあります。

英語で失敗したエピソード
 2年前に「SUSHINISTA」をオープンしてからは、ランチタイムが過ぎるまで毎日お店を手伝っています。レジで「イレブン dollars」と言って「は?」と言われることが多く、いろいろ試した結果「レブン」と言えば分かってもらえることに最近気づきました(笑)。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 英語での読み書きが少しは楽だと思うので、もっと世界中の文献を読み、知識を深めて博士号を目指したいです。修士を取得した後、教育博士の道に興味を持ちました。アメリカはいろんな考えを持つ人がいますが、その背景には「教育」が大きい要素を占めていると思うんです。何が善で何が悪かも教育の違いによって異なってきます。常識の捉え方も人によって全く違ってきます。多様さは事実ですし、どの考えが正しいかは誰にも判断できませんが、せめて個々が受けて来た教育背景を知ることで何か見えてくるものがあるんじゃないかと思うんです。と、私なりの考えを熱く語ってみたいのですが、そうするにも「教育」についての基本知識が足りない…。様々な国・年代の人の教育背景を国際教育や比較教育という形で学べば、視点がもっと広がり洞察力も得られると思い、現在プログラムを探しているところです。

あなたにとって仕事とは?
 私が必要とされていると思える場を与えてくれる、大切なものです。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 バレリーナ。バレエを踊るのと見るのが、何よりも大好きでした。

休日の過ごし方
 白ワインとパンとチーズが大好きなので、美味しい白ワインとパンとチーズを探し求めて色々な場所をまわっています。

最もお気に入りのレストラン
 レストランではありませんが、ホール・フーズ・マーケットに行くのが大好きです。トレーダー・ジョーズも好きだし、オークランドにあるロックリッジ・マーケット・ホールに行くとなぜかワクワクします。やはりパンとチーズを見るとテンションが上がるのかもしれません。

日本に戻る頻度
 1年に1回か2回。大学が夏休みの6月から8月に戻ることが多いです。

最近日本に戻って驚いたこと
 まずはお医者さんが安いことです。胃カメラが6000円! 一桁間違っているんじゃないかと本気で思いました。他には、コンビニで販売している100円のパンやコーヒーが美味しいこと。レストランで質問をしたら真剣に説明してくれること。チップもないのに本当に親切だと思います。お菓子の袋に開け方の説明がイラスト入りで丁寧に書いてあること。スーパーではりんごが一つ一つ綺麗に包装されていること。マーガリンが普通に売られていること。他にもまだまだたくさんあります。

ベイエリア生活が長くなったと思う時
 アメリカに来た当初、スーパーのレジで並んでいる人がお金を払う前にスナックを開けて食べ始めているのを見て本当に驚きました。運転中、赤信号なのに左から車が来ていなかったら右折してもいいことにも驚きました。アメリカの合理的さには感心するし、徐々に影響を受けてきている気がします。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 アパートの家賃の高騰ぶりです。上がり続ける家賃と物価を皆さんどうやってやり繰りされているのかと思います。アメリカの景気は良くなる一方で、この2年間にバークレー近辺のホームレスの異常な増加を目の当たりにし、格差を恐ろしく思っています。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 私が今教えている大学には、アメリカ人の学生ももちろんいますが、中国や韓国、東南アジアからの留学生で、日本語を学びたいと思い登録してくる学生もたくさんいます。日本語に興味を持って一生懸命学ぼうとしている学生の姿は本当に愛おしいものがあり、私が持つ出来る限りの力を出して、日本語と日本文化に興味を持ち続けてもらいたいと思っています。私なんてまだまだ経験が浅いけれど、こうやって草の根レベルでいろんな形で頑張っている人がたくさんいることを、どうか日本の政府は分かって欲しいです。お願いだから争いを助長するような行動を控え、日本が魅力的な国であり続けることを心から願います。

永住したい都市
 出身地である京都、もしくはスペインのバルセロナ。ハワイのマウイ島は夢の夢ですが、バークレーももちろん好きです! 

5年後の自分に期待すること
 教育博士号を目指し、苦悩している自分を想像しています(笑)。「SUSHINISTA」は事業展開し、3店舗目くらいを出店できていたら最高です。

座右の銘は?
 1つは「継続は力なり」。特別な才能など一切ない私ですが、今まで何事もひたすらにやり続けることで何とかやってきた気がします。

 もう1つは「何事も丁寧に」。レッスンは丁寧に準備することでミスが防げると実感してきました。「SUSHINISTA」でも、野菜を丁寧に切り、丁寧に味付けし、心を込めて巻いた寿司ブリトーは本当に美味しくなります。学生時代、社会人時代、現在の私…。日本でもアメリカでも多くの人に支えられながら生きていることを感謝し、人や物に対して丁寧に接することを続けていきたいと思います。

(BaySpo 2018/01/12号 掲載)

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