一般編  Vol.275
亀山 慎之介さん
NEDOシリコンバレー事務所長。1999年に東京大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省し、通商政策、経済協力政策、エネルギー政策、サービス産業政策、特許政策、中小企業政策、地域経済活性化政策などに携わる。2008年から2011年まで在シンガポール日本国大使館に出向。2016年より現職。
生まれ育った 素晴らしい環境を守り発展させたい
企業が直面する課題や、それを解消するための政策実現に取り組む国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)シリコンバレー事務所長の亀山さん。数多くの企業のグローバル展開を支援してきた亀山さんにベイエリアの暮らしぶりについて聞きました。
亀山 慎之介さん

(Shinnosuke Kameyama)BaySpo 1565号(2018/11/23)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 世界のイノベーションを牽引するシリコンバレーに身を置いて日本の経済活性化に貢献したいとの思いで人事に希望を出したら運よく今のポジションに就くことができ、2016年夏にベイエリアにやってきました。昔ロサンゼルスに留学したことがあり、カリフォルニアの青い空が忘れられなかったという思いもあります(笑)。NEDOは経済産業省の傘下にある政府系機関で、日本企業の研究開発支援、国際実証事業、ベンチャー育成支援などを担っている組織です。

ベイエリアの印象
 私は留学時代にロサンゼルスで生活していたので、ベイエリアの冬が思ったよりも寒く雨が多いことに驚きました。ベイエリアの人たちはとても明るく前向きで、また人と人のつながり、色々なレイヤーのコミュニティを大切にしますね。「とりあえず一緒に何か面白いことやってみようよ」というノリが好きです。よく「Give & Take」と言いますが、ここは見返りを求めずにとにかく「Give」をしながら動いている人が多い印象です。コミュニティに貢献したいという思いや、それが自分にもいつか返ってくるだろうという思いで動いていて、それを可能にする文化と信頼関係があるのがシリコンバレーの強みなのではないかと思います。

自分の専門分野について
 これまで経産省で様々な政策分野に関わってきましたが、特に私は分野の偏りなくジェネラルに色々な経験をしてきた方だと思います。その中でもあえて専門分野を挙げるとすれば、海外における日本企業のサポートに携わることが多かったと思います。今のポジションもそうですし、シンガポールにいた時も大使館の立場で日本企業のアジア展開の支援を行ってきました。経産省でもインフラ輸出、貿易金融、ODA、通商交渉、中小企業の海外展開支援などに携わりました。企業の海外展開に係る課題をお伺いし、それを政策につなげていく仕事です。

その道に進むことになったきっかけ
 私は小さい頃から自分や家族・友人、またそれを支える環境をどのように守っていけるのだろうかという漠然とした思いを持ってきましたが、それが次第に「日本が誇る経済力を維持発展させることが自分の環境を守るために重要なのではないか」という思いに変わっていきました。それが経産省を目指す原動力になったと思います。

;英語で仕事をするということ
 英語での仕事はだいぶ慣れましたが、それでも得意ではないので常に苦労しています。ただ、このグローバルな時代において、日本語で日本人とだけコミュニケーションをするというのはとても不自然で偏ったことだと思います。例えば、シリコンバレーを紹介する日本語の記事はたくさんありますが、現地の人たちと話す感覚とずれていると思うことも多々あります。世界で起きていることをリアルタイムに正しく理解するためには、フィルタのかかっていない一次情報を集めていくことがとても重要であり、そのためには英語で仕事をするというのは避けて通れないと思います。

あなたにとって仕事とは?
 自分や友人・家族の生まれ育った素晴らしい環境を守り発展させていくものですね。そして優秀な人たちと接して刺激を受ける機会が多いので、自分を成長させる上でとても重要なものです。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 小学校の卒業文集に「サッカー選手」と書いたような気がします。

休日の過ごし方
 土曜日は昼過ぎまで子供の補習校があるので、その間は妻とゴルフやデートをします(笑)。あとは家族と買い物や公園に行く感じです。友人を招いたBBQパーティも好きです。こちらに来て学んだ蕎麦打ちもたまにやります。庭に作った畑の手入れや熱帯魚と水草の世話も楽しいです。

好きな場所
 サラトガのダウンタウンのお洒落でのんびりした雰囲気が好きです。特に「Sue’s Gallery Cafe」が最もお気に入りで、よく本や雑誌を読んで過ごしています。

最もお気に入りのレストラン
 マウンテンビューにある「Cascal」のパエリアを外席で食べるのが好きです。日本食ではサンタクララにある昭和な居酒屋の「八町」が最も落ち着きますね。

よく利用する日本食レストラン
 「リンガーハット」です。家から近く、抜群の安定感です。同じく近場の「Tomi Sushi」や「Leichi」にもよく行きます。

最近日本に戻って驚いたこと
 ある意味当たり前のことですが、日本人だらけなことです。ここ数年で外国人観光客がだいぶ増えましたが、それでもまだ日本人ばかりですね。多様な人種・国籍が集まるシリコンバレーから戻ると特に強く感じます。小声でないと内緒話ができないので不便ですね(笑)。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 子供の文房具や日用品は日本のものがクオリティが高いのでよく買ってきます。そば粉や焼酎・ジャパニーズウィスキーなども買ってきます。

お勧めの観光地
 今年の夏に3度目のグランドサークル周遊をしました。もちろんモニュメントバレー、アンテロープキャニオン、アーチーズなどもお勧めですが、初めて訪れたチャコ・カルチャー国立公園がとても良かったです。片道13マイルの未舗装道路を通らないとたどり着かないため、かなりマイナーな世界遺産なのですが、10世紀前後の時代の巨大な遺跡が密集しており、保存状態も良く、プエブロ・インディアンの時代にタイムスリップしたような体験ができます。

永住したい都市
 具体的な都市名はわかりませんが、リタイアした後に住むのはやはり日本がいいですね。カリフォルニアの気候や開放的な文化も捨てがたいですが、食べ物が美味しいのが一番です。

5年後の自分に期待すること
 5年後には日本に戻っていると思いますが、シリコンバレーで学んだ感覚や今の日本に感じる違和感を忘れずに意味のある政策に挑戦し続けていたいです。また、今と変わらず家族が笑顔でいられることが何よりも重要です。

;最も印象に残っている本
 あえて『官僚たちの夏』を挙げておきます。時代は違うかもしれませんが、命を賭して国益のために戦う官僚たちの姿勢と覚悟の重要性は今も共通であり、自分に言い聞かせていることでもあります。

最も印象に残っている映画
 『Perfect World』。若い頃は色々と映画を見ましたが、その頃に最も感動し、また切なさを感じた映画です。古き良きアメリカの懐かしい感じの風景も心癒されます。

自分を動物にたとえると?なぜ?
 名字のとおり「亀」でしょうか。地道に努力して前に進むタイプです。ウサギには負けないつもりです。

座右の銘は?
 「幸運は苦労に宿る」「今より若い時はない」。

最近観た映画
 『Greatest Showman』。ただ同じミュージカル映画でも『La La Land』の方が好きですね。とても柔らかく美しい映画でした。LAに住んでいたので、あの雰囲気や空気感は大好きです。

(BaySpo 2018/11/23号 掲載)

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