一般編  Vol.293
曽根原 春樹さん
1978年横浜市生まれ。2001年中央大学総合政策学部卒後、シスコシステムズ日本法人に入社。エンジニアとしてキャリアをスタートしジュニパーネットワークス社時代にUS本社へ移籍。プロダクトマネージャーに就任後はBtoB、BtoC両方の領域でプロダクトマネジメントのキャリアを積み、現在はSmule社AI部門のプロダクトヘッドを務めるPrincipal Product Manager。 Twitter: @haruki_sonehara
チャンスを選り好みせず 最大限活かすことが、次のチャンスを呼びこむ
世界180ヶ国以上で展開するソーシャルミュージックアプリ「Smule」社で、AI部門におけるプロダクトマネジメントのヘッドを務める曽根原さん。様々な文化やバックグラウンドを持った多国籍な外国人をマネジメントするプロダクトマネージャーとして活躍する彼に、ベイエリアでの生活について伺いました。
曽根原 春樹さん

(Haruki Sonehara)BaySpo 1596号(2019/06/28)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 仕事するならいつかは海外で働きたいと学生のころから考えていました。その道は紆余曲折でしたが、日本で働いていた時に外資の日本法人の立ち上げに関わったことが縁となり日本法人からUS本社への社内転籍のチャンスを掴みました。それがきっかけで渡米したのが2006年の暮れです。

ベイエリアの印象
年間のほとんどが晴れなので、気持ちが不用意に沈むことはないですね。ちょっと嫌なことがあっても、カラっと晴れた空を見上げてれば「ま、いいか。次行こう。」という気持ちになります。

自分の専門分野について
 Smuleという音楽(ストリーミングとカラオケ)にソーシャル機能がかけ合わさったモバイルアプリがあるんですが、その会社でAIを使った楽曲のレコメンデーションやパーソナライゼーション部門でプロダクトマネジメントのヘッドをしています。さらに今はプロダクトマネジメントという仕事を日本にもっと広め、深化すべく活動しています。その一環でUdemyで講座も開設しました。

その道に進むことになったきっかけ
 シスコシステムズの日本法人で働いていた時、US側から発表されるプロダクトが日本のニーズに合っていないことがある中で売ったりサポートしないといけないことにストレスを感じていました。ユーザーからの不満を伝えても改善されることがあまりない現実を見ていて、自分が作り手にまわってユーザーがちゃんと使い続けてくれるプロダクトを手がけたい、さらにそれをグローバルに展開していきたいと強く思うようになったのがきっかけで、プロダクトマネージャーを志しました。

英語で仕事をするということ
 昔から英語に対する意識は強かったので勉強することは苦ではなかったです。ところが高校生の時に初めての海外旅行で訪れたアメリカで自分の英語が「全く」通じず、大きな挫折感を味わいました。逆にそれがいつか英語でフルに仕事したいことへのモチベーションとなりました。時を経て、世界へ向けてプロダクトを作り続け、今は多国籍な外国人をマネジメントする立場にいます。その過程で英語で仕事をするとは単に喋りがなめらかであることだけは不十分で、立場・文化・習慣を越えて相手を理解し自分の考えを理解してもらうオープンな雰囲気を作るコミュニケーションのほうがよっぽど大事だと思うに至っています。

英語で失敗したエピソード
 細かな失敗ならいくつかあります。例えばまだ移住して間もない頃、銀行等のカスタマーサポートに電話した際、最初の自動音声対応で自分の発音が通じないことがたまにあり、なかなか先に進めないことがありました。今はそんなことないですが。

英語が100%ネイティブ
だったらどんな仕事に?
今は100%英語がネイティブな環境で働いてるので同じことをしていると思いますが、チャンスがあればVCもやってみたいです。

あなたにとって仕事とは?
 自分の得意なことと、世の中で求められている価値への貢献度が密接なほど仕事は面白くなると思います。真摯に仕事に取り組むとチャンスが何度かやってきます。自分に降ってくるチャンスを選り好みせず最大限活かすことが、次のチャンスをまた呼び込んで来るでしょう。その過程で出会う様々な国の人々や、仕事における悲喜こもごもは人に深みを与えてくれると思っています。

いまの仕事に就いていなかったら
 今の仕事というか、もし自分に別の人生があったとしたらプロのサッカー選手としてヨーロッパとか南米でプレーしてみたいですね。ワールドカップやチャンピオンズリーグで普通に活躍するレベルで。

休日の過ごし方
 今の会社に入ってから音楽をやりたい欲に火がつき、ピアノを再開しました。基本ポップス系を中心に弾きますが、最近はジャズピアノに興味があり練習中です。仲間内でのミニコンサートがあるので、まずはそこで披露できるようになるのが直近の目標。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 日本のクオリティーのコンビニが近くにあればと思ったことは何度もあります。

日本に郷愁を感じるとき
 温泉や日本で食べるような、見た目も味も良い和食をSNSやメディアで見かけた時ですね。ツイッターで日本のフォロワーさんがおもむろに掲載する料理写真に郷愁を覚えることもたまにあります。

5年後の自分に期待すること
 億単位のユーザーが使うプロダクトを指揮していたいです。シェアリングエコノミーが大きく世界の政治と経済に影響したように、歴史が動く仕掛け人の一人であっていたい。

最も印象に残っている本
 『Influence without Authority』という本です。渡米してプロダクトマネージャー(PM)になる前の頃、どうしたらPMになれるかを当時のメンターに相談した時薦められました。自分の直接の部下ではない人達を巻き込むPMという仕事をする上で、重要な視点はここから学びました。

最近読んだ本
 『AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order”』です。AIの世界におけるUSと中国の考え方の違い、USのユニコーンと中国のユニコーンはどこにその競争力の違いがあるかなど、いろいろ示唆に富んでいます。

座右の銘は?
 『Find the best version of yourself』です。人や組織は置かれた状況や文脈で変化する必要がでてきます。それをポジティブにとらえ自分として何ができるのか、どのようにより良い結果に導くことができるかを追求できる能力は、強さと柔軟さを備えた姿勢だと思います。

(BaySpo 2019/06/28号 掲載)

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