一般編  Vol.351
大島 載容さん
1968年に大阪で在日韓国人の父と日本人の母の間に生まれる(両親の出会いはなんと大阪難波のひっかけ橋)。1988年に渡米しCSUEBで生化学部学士、生物学部修士号を取得後、バイオテック企業で研究者として勤務し現在に至る。空手四段、なぎなた四段、合気道初段。なぎなたで世界選手権に3度出場しUSチームキャプテンを任命される。現在は北カリフォルニアなぎなた連盟の副会長。妻と成人した息子の3人家族。
知識と技術を最大限に活かし社会に貢献 
留学を機に渡米後、30年以上にわたりベイエリア在住という大島さん。バイオテック企業で研究者として活躍する傍ら北加なぎなた連盟の副会長としても文化発展、継承に貢献。現役を続け「夢はなぎなた世界チャンピオン」と語る彼にここでの暮らしについて伺いました。
大島 載容さん

(Saiyou Ohshima)BaySpo 1690号(2021/04/16)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ
 1988年に渡米後、CSUEBの言語プログラムから大学院まで同校でしたので、ヘイワードに長く住んでいました。その後クパチーノに引っ越し、息子の高校卒業と同時にモーガンヒルで家を購入しました。永住権は1993年に抽選プログラムで当選しました。たまたまテレビで過去の抽選プログラムの様子を見たのですが、応募ハガキが届いた順にプールの中に入れられ、最後にショベルカーで上の方だけを混ぜていました。これなら締め切り間近に投函すれば上の方に残るので、選ばれる確率が高くなると考えその通り実行すると本当に当選しました。

自分の専門分野について
 専門分野は分子遺伝学です。特にリキッドバイオプシーと呼ばれ、組織ではなく血液からDNAを抽出し次世代シーケンサーにかけるまでのプロセスの開発に従事しています。この方法ですと患者の体に負担をかけることなく特定の遺伝子情報を解析することができ、個別化された診断と最適な治療方針の選択に役立ちます。以前勤めていたイルミナでは胎児の染色体異常を早期診断するための遺伝子検査キットの開発、現在はガーダント・ヘルスで特に癌の再発チェックそして早期発見に向けた精度の高い検査キットを実用化するための研究に携わっています。最先端技術を切り開くことによりゲノム医療に貢献できるやりがいのある仕事です。

英語で失敗したエピソード
 渡米したばかりの頃は英語が全くできず、ハロウィンパーティで魔女のコスチュームを着ていた友人に “You are a bitch.”と言ってしまいました。なんとwitchとbitchの区別すらできてなかったんです。僕に英語力がないのを分かっていて笑ってくれたので助かりましたが、冷や汗ものでした。

あなたにとって仕事とは?
 好きな得意分野で自分を磨き、得た知識と技術を最大限に活かしながら社会に貢献する。その見返りとして家族を養っていくのに必要な報酬をいただく。これら全てを満たす仕事に従事できることに感謝し、これからも頑張っていきたいと思います。

いまの仕事に就いていなかったら
 憧れの職業という意味では小説家です。実は何年も前から時間のあるときにエコとバイオの要素を取り入れたミステリー・ホラー小説を少しずつ書いています。舞台はベイエリアのバイオテック企業で、人間の杜撰さが招いた環境破壊による因果を題材にしています。何人かの知人に冒頭だけ読んでもらったところ結構評判が良く、みんな早く続きが読みたいと言ってくれています。まだまだ先ですが必ず書き上げて出版したいです。タイトルだけ公表しておきますね、『メット(転移)』です。

現在、住んでいる家
 2013年にモーガンヒルで新築のタウンハウスを購入しました。当時入札競争が激しくボロボロの中古物件でも価格が異常に跳ね上がっていましたので、固定価格で早い者勝ちの新築物件に狙いを定めました。その結果、中古物件よりもずっとお手頃価格で購入することができました。ソーラーパネルが装備されたオール電化のエコな物件です。最近の断熱材は質が良いのか、モーガンヒルは夏は暑いことで知られていますが、クーラーはあまり使わずに済んでいます。

乗っている車
 つい最近、長年乗り続けたカローラを慈善団体に寄付してテスラのモデルYを購入しました。カローラはさすが信頼の日本車です。ほぼオイルチェンジだけで18年間故障もなく良く働いてくれました。テスラの方はテクノロジーだけでなく、保険など様々なシステムの導入まで最先端です。運転データが記録され保険料が決まるため、自動運転を使用すれば人が運転するより安全だということで保険料が下がるらしいです。

日本に持って行くお土産
 できるだけ渡す相手の趣味やリクエストに応えるようにしています。例えば、アップルストアで波佐見焼のマグカップを見付けたときは、空手の先生のお土産にぴったりだと思い購入しました。先生はマグカップ収集が趣味で、その上波佐見町在住でしたので面白いと思ったのです。すると、そのマグカップは偶然にも先生の友人がアップルから受注したものと分かり、思わぬ “マグカップの里帰り”に大いに盛り上がりました。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 前に勤めていた会社ではサンフランシスコ支部に勤務していましたので、カルトレインとシャトルを乗り継いで毎日往復5時間かけて通勤していました。モーガンヒル駅には一日数本しか停車しないため、事故や故障で電車が遅れたときは通勤だけで一日が終わってしまうこともしばしばありました。それに、座席にノミが跳ねていて体中嚙まれたこともあります。そんな時は日本の定刻厳守で衛生管理が行き届いた公共交通機関の有難さを改めて痛感しました。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 コロナ禍で急増しているアジア人に対するヘイトクライムです。妻や息子が一人で外出する際は心配になります。

日本に郷愁を感じるとき
 日本の四季はいいですね。最近では昔大嫌いだったあの夏の蒸し暑さまでもが恋しくなります。長年カリフォルニアのきつい日差しにさらされていると乾燥肌やシミ、抜け毛がひどくなってくるんですよ。実はあのジメジメが肌を守ってくれていたんですね。あれ、抜け毛は遺伝ですかね?

お勧めの観光地
 モントレーのような素敵な観光地が近くにあることもベイエリアに住む魅力の一つです。水族館も楽しいですし、キャナリーローにあるアンティークモールは品揃えが良く見応えがあります。ラッコやペリカンを眺めながらの食事は少し贅沢な気分が味わえます。海にはスキューバダイビングで何度か潜ったこともあります。ある日、アザラシの赤ちゃんがずっと後をつけて来て興味ありげにこちらを伺ってるんです。くるりとした目がなんとも愛らしく思わず手を差し出してしまいました。すぐに近づいて来ましたが、野生動物に触れてはいけないのでそっと手を引っ込めると、挨拶をするように僕の目の前すれすれを旋回して行ったんですよ

5年後の自分に期待すること
 夢はなぎなたの世界チャンピオンですので変わらずに追いかけていると思います。なぎなたの世界選手権の出場資格には年齢制限がないですから。コロナが収まり次第サウスベイでなぎなたの指導を始めますので、5年後には生徒さんがたくさんいるといいですね。なぎなたを始める理由の中には袴姿に憧れたなんていうアニメファンも結構いるんですよ。「その“コスチューム”どこで購入できますか」というような質問を受けたりもします。始めるきっかけは何でもいいんです。もっと多くの人達になぎなたの素晴らしさを知ってもらいたいです。女性の先生方が確立した武道なんて他に類がありません。そこのところをアピールすればオリンピック競技に選ばれてもおかしくない日本、いや世界が誇るべき武道だと思っています。

座右の銘は?
 「運命がカードを混ぜ、われわれが勝負する」(ショーペンハウアー)運が悪いと言って諦めるのではなく、幸運を掴むかどうかは本人次第ということだと自分では解釈しています。ちなみに僕はこのカードプレーへの挑み方を日本の武道から学び、それに必要な精神力を稽古で鍛えています。悪いカードがきても平常心を保ち、焦らず忍耐強く次のカードを待つ。そして良いカードがくればタイミングを逃さず素早く行動に移すよう心がけています。

(BaySpo 2021/04/16号 掲載)

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