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| 文化芸能編 Vol.22 |
江副ゆかこさん |
ニュージャージーで生まれる。小学時代を日本で過ごし、中学・高校をバージニアで暮らす。高校時代、バージニア州立の選抜制ガバナーズスクール(放課後プログラム)でアートを本格的に学び始める。San Francisco Art Instituteに進学するため2001年にサンフランシスコへ。卒業後は学校をはじめとするベイエリアの様々なコミュニティと共同の壁画プロジェクトに携わる。現在はPrecita Eyes Mural Centerやサンフランシスコの孤児サポート団体にて壁画やアートを教える傍ら、アート作品やジュエリーの創作活動を続けている。ウェブサイト:yukakoezoe.com |
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世の中の余りものを使ったアート |
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アメリカ生まれ、アメリカ育ち。小学生時代を日本で過ごしたゆかこさんは、現在、サンフランシスコを中心にアーティストとして創作活動を続ける傍ら、学校や孤児のサポート団体でアートを教えている。そんなゆかこさんにとってアートとは?サンフランシスコでの生活とは? |
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アーティスト(Yukako Ezoe) | BaySpo 1147号(2010/11/12)掲載 |
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ベイエリアに住むことになったきっかけ 父親の仕事の関係で、生まれてから小学2年生までニュージャージーで過ごし、小学5年生までは日本に住みました。その後また家族で渡米し、高校までをバージニアで過ごしました。ベイエリアは、San Francisco Art Instituteという大学に進学するため2001年に引っ越して来ました。
アートの道へ進むことになったきっかけ バージニアの高校時代に、ガバナーズスクールという、州政府が資金を出すアート専門の選抜制の放課後学校があったのですが、そこに入ったのが本格的にアートを勉強しはじめたきっかけです。もともとアートが好きだったので、この学校には何としても入りたくて、実際にここで学んでいた間もとても楽しくて勉強になりました。ここには全米のアート系の大学から学生をスカウトする人たちが訪れて、私もSF Art Instituteの担当者が来たときにお会いしたことがきっかけで入学を申し込むことになりました。サンフランシスコは兄が住んでいるのと、東海岸よりも日本に近いという理由もあって決めました。
ベイエリアの印象は? 心地のいい場所でなかなか引っ越せませんね。特にサンフランシスコはアートやカルチャー的にも面白いです。ただ家やアトリエの家賃が高い!
日本で過ごした子ども時代の思い出は? 小学校で学級新聞を作ったりして楽しかったのを覚えています。「今日、○○君が蹴ってきた」とかそんな内容なんですけどね…。あと、「ピコピコ天使」というキャラを作り出したりもしました(笑)。今考えたら、その頃からそういった絵を描いたり、何か作り出したりするのが好きだったんですね。あ、それから、アメリカから来たばかりで、日本語が上手じゃなかったので、同級生から「外人」って呼ばれてました(笑)。
日本語はどうやってキープを? バージニアで補習校に中学3年生まで行っていたのと、あと夫が日本人なので今でも日本語を話しますし、日本のテレビ番組などを観るのも好きなので。でも私の兄と姉はほとんど日本語が話せないんですよ。
現在の活動は? アート作品を作って展示会などに出したり、最近ではジュエリーを作って何軒かのショップの卸しています。それに「バハマカンガルー」というオリジナルのラインを夫と一緒に作っていて、Tシャツなどを出したりもしています。ほかには、学校などで壁画の授業を教えたり、サンフランシスコの孤児をサポートする団体でアートを教えています。それから凧のデザインをするのも好きで、去年と今年のバークレーカイトフェスティバルでは浜松凧に絵を描いたり、サンフランシスコで行なわれたアート凧の作品展をキュレーターとしてもお手伝いさせてもらいました。先日は、自分の描いた浜松凧をオースティンの野外フェスティバルで展示してきました。
ゆかこさんのアートはどんな作風? 「ポップ・フォーク」といえばいいかな?壁画やペインティングも好きですが、最近はコラージュにハマっているんです。「クラフトコラージュ」って呼んでいるんですが、古着など捨てられたもの、世の中の余りものを材料にして作品を作っていくのもひとつのテーマにしています。
好きなアーティストは? 葛飾北斎と横尾忠則の世界がものすごく好きです。
ゆかこさんにとってアートとは? 作品を作っていないと、頭が痛くなることがあるんですよ。でも作り始めるとすぐに治っちゃう。人間みんなそうやって何かバランスをとるものってあると思うんですよ。 今、孤児の子ども達にアート教えていますが、サポート団体のディレクターからは、彼らが悲しさやつらさを一時でも忘れるために、少しでもそれを取り除くためにアートをやらせてあげてくれ、と言われました。表現したり、作ったりすることに専念することで、何かなぐさめられることってあるんですよね。ただ孤児である子ども達の場合、アートといっても、飾り類よりは日常に必要なものを作るのが好きですね。一度、巾着袋の作り方を教えたら、ある子が「自分で作ったぞー!」とものすごく感動して、こっちが驚いたことがありました。服が破れてたりする子達なので、「これから縫い物は自分でできる」と…。
留学経験 アムステルダムのアート学校に留学したことがあります。
生まれて初めてなりたいと思った職業 薬を作るかお菓子を作る職業です。日本の小学校でおままごとをしたときに、私は薬屋さんをしたのを覚えています。
いまの仕事に就いていなかったら グラフィックデザインを頑張ってみたいです。
睡眠時間は? 9時間くらい寝ます。大体いつも夜中の3時に寝て、お昼か夕方に起きます。
休日の過ごし方 友達と夜のサンフランシスコで出かけるのが好きです。ギャラリーやバー、ミュージックショー、ハウスパーティーなどなど。それから、「Lockits」というモペッド(原付バイク)の女ギャングに入っているので、たまにメンバーのみんなと一緒に走るのもとても楽しいです。乗っているのは、maxi、puch 1975。これなしでは生きていけません。
好きな場所 ミッションにある自分のアートスタジオと自分が通ったSan Francisco Art Instituteです。
最もお気に入りのレストラン 「玉瀬井寿司」です。
1億円当たったとして、その使い道 貯金します。アーティストは貧乏なので…(笑)。あとは日本に遊びに行くかな。
日本に戻る頻度 2、3年に1度です。
日本に行ったらすること 友達と一緒にカラオケかな。あと、田舎の変わったお店に行くと、たまにビンテージものを発見することがあります。大昔のミッキーマウスとか。そういうビンテージものを発掘するのが楽しいですね。この間も色々と友達のビンテージショップに買い付けてきました。
最近日本に戻って驚いたこと 皆のファションがかわいいこと。それにみんな小奇麗じゃないですか。私なんてみんなに汚い、汚いって言われるんです(笑)。あと優しくて丁寧な人ばかり。冷たい人なんていないからびっくりします。
日本に持って行くお土産 メキシカンのかわいいキャンディーとかあとは自分のジュエリー。あとは「slingshot schedule book」というバークレー発祥のちょっとパンクな手帳です。日にち欄に、この日にこういう革命が起きた、とか、どこで爆破事件があったとか、ちょっとアナーキストっぽいことが書いてあるんです。裏にはローカルのお店リストも載っていて便利ですよ。ヘイトストリートの本屋さんとかによく売っています。
お勧めの観光地 東京は何度行っても、どこに行っても楽しいですね。
永住したい都市 オレゴンのポートランドです。西海岸ではアートの活動も盛んで、物価が安いので。こんなスタジオのアトリエも100ドルぐらいで借りれたりするらしいです。日本にもまた住んでみたいという気持ちもあります。
座右の銘は? モペッドギャングの「Lockits」でよく合言葉として言うんですけれど、「Lock it down, lock it good!」、「自分の身は自分で守ろう、自分のことは自分でやろう」みたいなノリです!
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インタビューを終えて ゆかこさんのスタジオにお邪魔しました。とにかくカラフルなその部屋はゆかこさんの雰囲気そのもの。「余りもの」がアートとして蘇ったゆかこさんの作品がどんどん世に出ていくことを期待しています!
(BaySpo 2010/11/12号 掲載) |
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