一般編  Vol.141
久保井亮一さん
1946年生まれ、大阪府堺市育ち。1968年に大阪大学基礎工学部化学工学科を卒業。その後イギリスUniversity of Birminghamへ2年間留学し研究を続けた。2010年の4月に大阪大学サンフランシスコセンター長として渡米。センター主催の講演会では大阪大学出身の著名な教授や医師などを招き、同窓会メンバー又は日本の学生との結びつきを実現させるため活動を行っている。
グローバルな人材の育成を
 大阪大学サンフランシスコ教育研究センターのセンター長を2010年より務める久保井さんのミッションは「グローバル人材の育成」と、北米全体で大阪大学の卒業生や留学生のネットワークを結びつける同窓活動の活性化。6月にはその活動の一環として講演会及び同窓会が開催される。
久保井亮一さん

(Ryoichi Kuboi)BaySpo 1226号(2012/05/25)掲載

ベイエリアに住むことになった きっかけ、渡米した年  
 2010年4月から、大阪大学サンフランシスコセンター長・北米同窓会の事務局長としてこちらに赴任をしてきました。約20年間、同大学の助教授・教授を務め、30名以上の博士人材を育てましたが、名誉教授となり退職をきっかけとして今回の職務についたんです。特に同窓会は、今まで東海岸支部は元気があったのですが、ここベイエリアの活性化はできていなかったので、何とか盛り上げられるようにというミッションがあります。日本の学生たちが留学してきた際に受け入れられる体制づくりや、大阪大学の著名な先生方に海外出張の際には講演会をお願いして、ネットワークを広げるということも現在行っている活動の一環です。

ベイエリアの印象  
 海洋と天空の壮大な光景。特に真っ青な空と、日本からは高知の先端から坂本竜馬が眺めていた太平洋を今度はこちら側から眺めているということに感動をしました。また、社会の雰囲気としては「何でもあり」という感じ。皆、自分のことと今を大事にして生きているという印象を受けました。

自分の専門分野について  
 現在は、グローバル人材の育成と日米学生交流を行っています。大阪大学の人材リソースを用いた講演会の開催や留学生・卒業生のコミュニティーの活性化を行っています。日本の学生向けへは2012年度の国際教養科目として毎週金曜日、このセンターからライブ講義を届けており、第1回は在サンフランシスコ総領事の猪俣氏にも講義を行って頂きました。大学の専攻と教授時代の専門は、バイオケミカル・エンジニアリングサイエンスです。

その道に進むことになったきっかけ  
 大阪大学にしかない、基礎工学部とその創立者正田先生との出会いがきっかけでした。大阪大学には、理学部と工学部が元々あったのですが、その二つを融合することで、新しい科学技術・産業・文化を生み出せるような学問、研究領域が基礎工学部の考え方になっています。基礎工学部出身で世界で活躍している人々を見ると、基礎工学というものが何かということがわかると思いますよ。  
 本当は卒業後、教授になりたいとは思っていなかったのですが、イギリスへ2年間留学する機会があり、そこでの研究や経験を経て、助教授・教授の道に進むことになりました。 英語で仕事をするということ  国際学会に参加をする際には必ず必要になります。その中で情報発信をするためのコミュニケーションツールが英語なのですが、やはり育ってきた文化が違い、相手の立場に立った表現の仕方や喋り方をしなければ、理解してもらうのは難しいと感じます。せっかく伝えようと話したのに、全く見当違いの質問が返ってくるとショックですよね。

英語で失敗したエピソード
 失敗したというか、英語のジョークはわからないことが多いですね。

英語が100%ネイティブだったら どんな仕事に?
コーネル大学で生態心理学の教授をしてみたいです。私が研究をしてきたAffordanceを提唱して生態心理学の領域を切り拓いたJames Gibsonがコーネル大学の教授でしたから、その場所で現地の学生と共にディスカッションをしたり研究ができたらどんなに楽しいかと思います。

あなたにとって仕事とは?
 自己の可能性の発見ができるものだと考えています。現在関わりを持っている学生たちの可能性を開拓してあげるとともに、自分自身の可能性も広げられることだと感じています。

生まれて初めてなりたいと思った職業  
 SF作家・宇宙飛行士、それから小学生のときは球技をやっていてそれを応援してくれる応援団長になりたいとも思ったりしました。応援はする側が常に元気でないと相手を元気にできないので、そちら側になってみたかったんです。

いまの仕事に就いていなかったら  
 子供図書館の館長や童話作家。または山登りが好きなので登山家とか。 現在、住んでいる家  Japan Townの近くのアパートです。最初来たばかりのときに、サンフランシスコ内をたくさん歩き回り5箇所ぐらいを候補にしていたのですが、結局妻が気に入った今のアパートに決めました。

乗っている車  
 三菱ギャラン(初代のセンター長譲りの年代物です)

睡眠時間・起床時間・就寝時間  
 7時間・6時半・11時半

休日の過ごし方  
 妻のしたいことや行きたい場所が中心になっているので、ショッピングやドライブなど。自分では読書や俳句、乗馬・散策なども楽しんでいます。

好きな場所  
 Lands End Park, Ocean beach

最もお気に入りのレストラン  
 Sam's Grill

よく利用する日本食レストラン  
 Japan Townの赤とんぼ。ちょっとした気遣いなどがあたたかいお店です。

1億円当たったとして、その使い道  
 大阪大学の新咸臨丸プロジェクトファンド

日本に戻る頻度  
 3月・9月の2回は日本で行われる会議に出席しています。

最近日本に戻って驚いたこと  
 大阪駅前(北ヤード)の開発がとても進んでいることには驚きました。それからどこへ行っても接客や対応がややマニュアル化されてしまっており、古来のもてなしの心というものを感じられる機会が少なくなってしまったように思いました。

日本に持って行くお土産  
 ワイン・チョコレート・ウィリアムソノマの調理器具

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの  
 食品や調味料、書籍

現在のベイエリア生活で不便を感じるとき  
 公共交通機関が未発達なこと、また、温泉が不足していること。

現在のベイエリア生活で不安に感じること  
 未来の世代、それから知人が銃乱射事件で負傷したことがあり銃社会を身近に感じ、不安に思いました。

日本に郷愁を感じるとき  
 俳句が趣味なので四季のめりはり、それから温泉です。

お勧めの観光地  
 ヨセミテ、モントレー、タホ、グランドキャニオン、ラスベガス

永住したい都市  
 日本ならやはり大阪か、昔から憧れの強かった仙台。日本以外なら、留学時代に滞在をしていたBirminghamなどのハート・オブ・イングランド、シェークスピアカントリーと呼ばれるあたりです。

5年後の自分に期待すること  
 現在ミッションとなっているグローバル人材の育成をガイアシンフォニーと呼べるまでに結び合わせ広げること。

最も印象に残っている本  
 『代表的日本人』内村鑑三

最近読んだ本  
 『心づくしの日本語』ツベタナ・クリステワ、『こぐま園のプッチー』室伏きみ子

最も印象に残っている映画  
 『ガイアシンフォニー第四番』 最近観た映画  『ヒューゴの不思議な発明』

自分を動物にたとえると?なぜ?  
 犬(犬が好きなので・・・)

座右の銘は?  
 夢見て行い考えて祈る(大阪大学第11代総長 山村雄一)

・・・・
取材を終えて  
 日本の若者たちが世界で活躍していけるようにと活動を行う久保井さん。また大阪で生まれ育ち大阪が大好き!と関西人パワーは健在、という雰囲気でお話を頂きました。日本の学生さんたちがベイエリアへももっと訪れてもらえると良いですね。

(BaySpo 2012/05/25号 掲載)

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