一般編  Vol.113
ホワイト・ウィントン・雄一郎さん
 ニューヨーク生まれ、日本育ち。11才からピアノのレッスンを受け、後にチューバ、ベースギター、作曲、歌唱と分野を広げる。17才の時にウィンドアンサンブルのための作曲で賞を授与される。高校卒業後はロサンゼルス郊外のバイオラ大学へ進学し、チューバを専攻。サンフランシスコ音楽院大学院では作曲を学ぶ。現在は、アメリカ各地、日本やフランス在住の友人ミュージシャンのために作曲活動を続けながら、カウンターテナー歌手として活躍中。グレース大聖堂、SFコーラルアーティスツ合唱団のメンバーとして、中世音楽、バロック並びに現代音楽を歌っている。
音楽は僕の母国語。どんな国の人にも届けられる言葉。
 作曲家であり、グレース大聖堂の専属歌手であり、膨大な批評リストをビールブログとしてオンライン発信する“ビールオタク”でもある雄一郎さん。サンフランシスコでのユニークな暮らしぶりを聞いた。
ホワイト・ウィントン・雄一郎さん

作曲家・カウンターテナー声楽家(Winton Yuichiro White)BaySpo 1122号(2010/05/21)掲載

出身は?
 ニューヨークで生まれて、日本で育ちました。小学校から高校までは横須賀の米海軍基地内のアメリカンスクールに通っていました。
ベイエリアに住むことになったきっかけ
 高校を卒業後に渡米して、最初はニューヨークの北側にある田舎にある大学に通いました。横須賀の米軍基地は、日本といっても中の雰囲気はアメリカだったのですが、それでもニューヨークに来てからはカルチャーショックを感じました。東海岸の男性、特にニューヨークやロングアイランド出身者はちょっと強い性格の人が多いんですね。思っていることはバシっとストレートに言うけど、深い気持ちのやりとりはなかなかない。僕は特に中身がすごく日本人だから、そういう雰囲気が合わなかったのもあって西海岸に移ることに決めました。ロサンゼルス郊外にあるバイオラ大学に転入し、卒業後、2006年にサンフランシコ音楽院に受かり、ベイエリアへ引っ越してきました。

ベイエリアの印象は?
 色々な人が混ざりあっている、すごく自由な都会という印象。アーティストにとっては楽な場所です。時々「自由すぎる」っていう時もありますけど、その変わっているところも大好きです。僕が住んできた場所で、リラックス度が高い順番は、サンフランシスコ→ロサンゼルス→ニューヨーク→東京だと思います。

音楽をやるようになったきっかけ
 子どもの頃からピアノを習っていて、中学校からチューバを演奏するようになりました。高校1年生のときにはすでに音楽大学へ行きたいと思うようになっていて、同時に作曲も始めました。大学ではチューバ、大学院では作曲を専攻しました。

現在の活動は?
 今、音楽活動としては作曲家として自分の作曲を演奏しているのと、あとはサンフランシスコのグレース大聖堂でプロとして歌っています。ほかにはHideo Wakamatsuというデザイナーバッグのお店で働いています。
 グレース大聖堂での仕事は、リハーサルと礼拝の出演を含め、週に6時間くらいですが、お給料もちゃんともらえるんですよ。子どものメンバーは奨学金をもらっています。

歌はいつから?
 僕は、女性のアルトと同じ音域を歌うカウンターテナーというめずらしいパートなのですが、これは映画「もののけ姫」でテーマソングを歌っている米良美一さんと同じといえばわかりやすいでしょうか。本格的なレッスンは特に受けたことはなかったんですが、たまにジャスティン・ティンバーレイクとか平井堅を真似して、遊びでファルセットという裏声で歌ったりしていたことはありました。教会でカウンターテナーを募集しているというのを聞いて挑戦してみたら、あ、歌えた、という感じだったんです。サンフランシスコには、「シャンテクレア」という、世界中をツアーする有名な合唱団があるのですが、いつかそこでメンバーとして活動するのが目標です。来年あたりからオーディションを受けようかなと思っています。

作曲について
 ジャンルは一応クラシックですが、何でもアリの現代音楽といった方がいいですね。アートミュージックともいいます。僕の音楽は簡単にいえば、メロディーとリズム。今、作っているのは、コンピュータでいろいろな音を出すエレクトロニカにアコースティックの楽器をのせるスタイルです。ほかには、日本の歌曲やマリンバといった楽器を使った曲もあります。近いうちにオーケストラの作曲にもチャレンジしたいと思っているところです。これがなかなか難しいんですよね。フルートのソロ作曲を三輪車に乗ることだとすると、オーケストラの作曲は飛行機を操縦するくらいの違いがあります。

作曲はどんな風に?
 最近ではコンピュータで作曲する人も多いですが、それだと、なんとなく安っぽく聴こえてしまうことが多いと思います。でもピアノで作曲すれば、やっぱり色々な音の組み合わせが簡単にできるので、もっと豊かな曲を作りやすいんです。そういう理由で、僕はピアニストではないですが、頑張って作曲はピアノでやっています。自分自身がオーケストラの中ででチューバを吹いていたことがあるので、他の楽器ひとつひとつの音色は頭の中に入っています。だからオーケストラの曲も、ほとんどは頭の中で作ってから、ピアノを使って形にしていく、という感じですね。

雄一郎さんにとって音楽とは?
 僕の母国語。例えば日本語で「さりげない」っていう言葉がありますけど、それとぴったりくる英語の単語はないんです。それと同じで、言語で表現できないことが、音楽だとぴったり表現できるということがあります。それはどの国の人にでも、心の奥まで届けることができる言葉。それがすごく美しいと思います。

休日の過ごし方
 ビールを飲みながらアメリカの番組や、日本のお笑いや、アニメの番組を観ています。実は僕、ビールが大好きで、iPodに飲んだビールのリストをつけているほど、いってみればビールオタクなんです。You Tubeではビールブログもアップしています。ちなみに「yuichituba」で検索すると出てきます。歌によくないので、なんとか頑張って毎日は飲まないようにしていますが(笑)。

好きなビールは?
 以前は食べ物の組み合わせによって美味しさが違うと思っていたんだけど、最近、これだ、という好きなスタイルがわかったんです!それは、「Quadrupel(Quad)」という黒系で、プルーンとかラズベリーのダークフルーツの味と、キャラメルの風味もしっかりあります。それから、サンタローザにある「Russian River」というブルワリーで飲んだ2月限定のビール「Pliny the Younger」もめちゃくちゃウマかったですね。

日本のビールは?
 キリンのラガーやYEBISUとか、日本のビールも好きです。一度、北海道でアサヒの「Prime Time」をラーメンと一緒に食べたときは本当に感動したな〜。日本に行くと、あまり知られていないクラフトビールもよく買って帰ってきます。最近美味しかったのは、茨城で作られている「常陸野(ひたちの)」や赤米で作った「赤米エール」。これは、サンフランシスコでも「Healthy Spirits」とか「City Beer Store」などのビールストアで買えますよ。

最近日本に戻って驚いたこと
 渋谷にまだガングロやヤマンバがウロついていること(笑)。駅で見かけてびっくりしました。

好きな場所
 つい先月、友達に会いに行ってきたスコットランドにハマっています。ビールとスコッチ好きの自分にはもう最高でした!

5年後の自分に期待すること
 プロの合唱団でさらに活躍して、いつかヨーロッパでクラシックのミュージシャンとして生きていきたいです。

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インタビューを終えて
 音楽とビールについての話になると、こちらまで楽しくなってしまうほど、目を輝かせて、活き活きと語ってくださった雄一郎さん。その姿は何だかものすごく幸せそうでした。大好きなものが多ければ多いほど人生は豊かになるなぁと改めて思わせられました。


雄一郎さんに5つの質問

お勧めの観光地
 夕方、ツインピークスから見える夕焼けは最高です。

最も印象に残っている本は?
 キリスト教の聖書。

最近読んだ本は?
 「Ravel Remembered」。フランスの作曲家の本です。

生まれて初めてなりたいと思った職業は?
 漫画家。

座右の銘は?
 聖書のエレミヤ17:9から「人の心は何にもまして、とらえ難く病んでいる。誰がそれを知りえようか」。

(BaySpo 2010/05/21号 掲載)

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