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| 一般編 Vol.108 |
山本愛子 さん |
静岡県浜松市出身。浜松学芸高校卒業後、カナダへ留学。2005年にアメリカで音楽を勉強するために渡米。カリフォルニア大学イーストベイ校で英語を学んだ後、2006年9月にSan Francisco Conservatory of Music(サンフランシスコ音楽院)声楽科に入学。現在同学科4年生で今年5月に卒業予定。 |
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つらい経験も歌で表現 |
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音楽家を多数輩出した実績と伝統を持つ、西海岸の名門音楽学校、San Francisco Conservatory of Music。ここで数少ないアジア人、唯一の日本人生徒として声楽科に在籍するのが山本愛子さん。山本さんに歌への想いや生活ぶりを聞いた。 |
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San Francisco Conservatory of Music(Aiko Yamamoto) | BaySpo 1112号(2010/03/12)掲載 |
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ベイエリアに住むことになったきっかけ 日本ではトランペット専攻で音楽高校を卒業しまして、そのあと、カナダのバンクーバーに半年留学しましたが、ジャズにも興味があったので、やはりアメリカに行こうと決断しました。日本に近い西海岸を選び、2005年に渡米。まずはカリフォルニア州立大イーストベイ校の英語コースで、英語の勉強をしました。
ベイエリアの印象 ヘイワードにあった学校から見えた夜景に感動し、アメリカに来て本当によかったと思いました。
オペラはいつから? 高校ではトランペット専攻でしたが、中学生の時には地元の合唱団に所属したりして、歌うことが大好きでした。そういうわけで高校での副科専攻も声楽でした。渡米する前にKOBE国際学生音楽コンクールに声楽で挑戦してみたのですが、この時、本選をパスすることができたんですね。それがきっかけで歌も本格的にやってみようと思うようになりました。正式な勉強を始めたのは、SF音楽院に入ってからです。
SF音楽院での学生生活について 現在は4年生で、この5月にやっと卒業です。今だから、頑張ってよかったと思いますが、何度も挫折しそうになりました。最初の1、2年は、言葉の壁や文化や考え方の違いにものすごく苦労し、とにかく慣れるのに大変で、学校で泣いてしまうことも多々ありました。特にアジア人の声楽専攻はほんの数名しかいなくて、ほかのアメリカ人の迫力には幾度となく驚かされました。ましてうちの科の生徒は、カフェテリアなどで遠くから見ても「あれは声楽科」とわかるくらいキャラが濃い人が多くて…。でも、アメリカ人のお友達もできたお陰で、英語はすごく伸びたと思います。
英語で失敗したエピソード オンラインで花束を贈った際、そのサイトで無料の会員登録だと思って、あまり説明を読まずに登録をしたら、後で見覚えのない支払いを請求されてしまったことがあります(笑)。
授業はどんな感じ? レッスンだけではなく、歴史や語学など教養学科もありまして、こちらの勉強も大変でした。声楽科はあまり練習しすぎると喉によくないということもあって、練習時間は1日平均3時間くらいで、あとは宿題にあてることができますが、ピアノ科の人達はもっと練習時間が多いので大変だろうなと思います。 歌の方は、大学の先生によるレッスンと、コーチによるコーチングの2種類があります。レッスンでは、発声や音楽性に関して、実際の歌い方を教えてもらいますが、コーチングというのは語学の発音だったり、オペラのバックグラウンドであったり、そういった知識の面でアドバイスをもらえる機会になります。
あなたにとっての音楽、オペラとは? 呼吸です。人間が呼吸をしなければ生きられないように、もし私の人生に音楽がなかったら、今の私はいなかったと思います。どんなに辛いことがあっても、私の人生に音楽があったお陰で、今の私がいるのだと思っています。 最近、自分の机の上に、5つの言葉を書いて貼ってあります。その言葉は、「オペラ歌手」「初心を忘れず」「心を積極的に」「無償の愛」「忍耐」。正直、最初は半信半疑で貼りましたが、これを毎日眺めるだけで、落ち込んだ時は特に頑張ろうと思えるようになります。特に私は、一人の人を想いすぎるような恋愛下手なところがあって、今までは失恋をする度に、もう辛いから帰りたいと思うことがありました。でも、どんなに傷ついたとしても、辛い経験や一人の人をあそこまで想えたという事実を、自分の歌として表現することができるのだと思うと、今はここまで自分が頑張った形跡があるからこそ、絶対に負けないと思えるようになりました。人間悲しむ事はいくらでもできます。でも、そういった辛い時に、どれだけ頑張れるか、それによって人生もの凄く変わると思っています。
生まれて初めてなりたいと思った職業 お花屋さんかケーキ屋さんです。
現在、住んでいる家 日本語が少し話せる大家さんと、高校の時の同級生と、双子の猫ちゃんがいる一軒家です。大家さんはクラシックが好きということもあって、家で歌を練習していても今のところ苦情はきていません(笑)。
睡眠時間・起床時間・就寝時間 睡眠は約7時間。週末は8時間以上は寝るようにしています。起床時間は、日によって違いますが、早い時は7時、遅い時は9時頃。就寝時間は、できるだけ12時前に寝るよう心がけていますが、遅いと2時前後になる時もあります。
休日の過ごし方 お友達と一緒に過ごすことが多いです。練習はもちろん、宿題やテスト勉強もします。
好きな場所すごすこと 学校の図書館(最上階)から見える景色が好きです。晴れた日のゴールデン・ゲート・パークやサンフランシスコのダウンタウンなど、お天気の良い日に出かけるとウキウキします。
最もお気に入りのレストラン SFサンセットにある「Koo」と、カストロにある「Sushi Time」。どちらも日本食レストランで、お店の人がとにかく温かく、お料理も本当においしいです。お勧めです!
1億円当たったとして、その使い道 まず、今まで私をここまで支えてくれた両親に恩返しをし、余った分は、オペラ鑑賞をしに、ヨーロッパ旅行へ行きたいです。そして、友達とチャリティー・コンサートもしてみたいです。
日本に戻る頻度 年に2度、もしくは1度。
最近日本に戻って驚いたこと 毎回帰国する度、さまざまなことに驚かされますが、今回は年末年始だったため、とにかく寒くてびっくりしました。それから地元で、マンガを読むためや、DVD鑑賞のためのプライベート・ルームに、カラオケ、ビリヤード、ダーツ、マッサージ機、シャワー室、そしてさらにジュース飲み放題やアイス食べ放題までがまとまっている場所も驚きでした。
日本に持って行くお土産 ギラデリのチョコレート。ビクトリア・シークレットのグッズ。
日本からベイエリアに持って帰ってくるもの 化粧品や日本食、雑誌や本です。
現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき 温泉がないこと。
現在のベイエリア生活で不安に感じること ホームレスが多いこと。
日本に郷愁を感じるとき 美味しいお鍋やすき焼き、しゃぶしゃぶなどが食べたくなるとき。
お勧めの観光地 ヨセミテ、レイク・タホです。
永住したい都市 今現在は、サンフランシスコです。
5年後の自分に期待すること 一人でも多くの人に、自分の歌った歌で感動を与えられるようになることです。自分が歌や音楽で感動を与えてもらったように、誰か一人でも多くの人に、何らかのきっかけや元気になるパワーを与えられたら、それだけで幸せです。
インタビューを終えて インタビューの前に、学校の教室で歌声を披露してくださった山本さん。ピアノ伴奏の方によると「アジア人でこれだけの声量を出せる人は珍しい」とのことですが、本当に間近で聴く山本さんの美声は、迫力たっぷりで鳥肌モノでした。
山本さんに5つの質問!
好きな本 「The Rules ―理想の男性と結婚するための35の法則」、「恋愛のルール」は、恋愛体質の私にとっては、とても勉強になる本でした。
自分を動物にたとえると?なぜ? 犬とうさぎ。人懐っこくご主人様をひたすら待ち続けるところは犬っぽく、でも時々すごく寂しがり屋になるところはうさぎっぽいところです。
最も印象に残っている映画 「The Audition」です。これは映画ではなく、メトロポリタンで行われた声楽コンクールに関してのドキュメンタリーDVDですが、自分が目指している事のハードルのもの凄い高さを感じるとともに、歌うことの素晴らしさを改めて実感させてもらいました。
最近観た映画 「When in Rome」と「Valentine’s Day」です。どちらともロマンチック・コメディーで、とても心にジーンときました。辛いことも色々とありますが、やはり恋は素敵ですね。
山本さんの歌声はどこで聞ける? 3月14日(午後1時〜)にジャパンタウンの紀伊国屋前にある階段を下りた所にある小さなスペースにて、日本歌曲や歌謡曲などを5曲ほど歌います。4月25日(午後2時〜)にSF音楽院でバロック音楽の演奏会があり、私も歌います。それから、5月20日(午後8時〜)には、同じくSF音楽院で、私の卒業ソロリサイタル(1時間プログラム)を行います。
(BaySpo 2010/03/12号 掲載) |
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