一般編  Vol.156
梅津 廣道さん
 大分県中津近郊(川を隔てた福岡県側)出身。実家が寺院で仏門の道に入る。龍谷大学卒業後開教使となり、1973年にアメリカに渡りフレズノ仏教会に配属される。その後、休職して米国海軍で4年間を過ごし、1980年からロサンゼルスに7年、その後はオークランド仏教会に所属。1996年からはサンフランシスコ本部、2012年4月より米国仏教団総長に就任。 
1人でも多くの方に 仏教を受け入れてもらいたい
 1973年に浄土真宗本願寺派の開教使としてアメリカに渡り、2012年には米国仏教団の最高責任者である総長に就任。1人でも多くの人に仏教を広めるため、全米をまたにかけて活躍する梅津総長にベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
梅津 廣道さん

(Kodo Umezu)BaySpo 1292号(2013/08/30)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ
 アメリカに来たのは1973年で、バークレーで数週間過ごし、その後2年はフレズノの仏教会で働きました。まだ当時のフレズノは日本語を話す方が大変多く、私も英語が不得手だったので「このままだと将来的に英語の環境になじめない」と思って一念発起し、休職してアメリカ海軍に入ったんです。英語の学校に行こうとも思ったのですが、知人に「手っ取り早いのは軍隊に入るか、刑務所に入るかだ」と言われまして。刑務所はいやだなぁ・・・と思ったのと、目にした看板に書いてあった「海軍に入って世界を見よう!」というキャッチフレーズに惹かれてしまって(笑)。もちろん当時はいろんな非難もされましたが、こういったいろんな経験があって今の自分がありますので。その後はロサンゼルス、そしてオークランド仏教会、1996年からはサンフランシスコの米国仏教団本部で働いており、昨年の春に米国仏教団の総長に就任しました。

ベイエリアの印象
 空気も天候も良く、とても良い場所だと思います。LAが長かったもので、LAに比べたら渋滞も少なくフリーウェイも走りやすいので快適です。ただ、ベイエリアに引っ越して来た当初はサンレアンドロに住んでいたので、日系スーパーが近くにないことだけが当時は不便に感じていました。

自分の専門分野について
 米国仏教団(Buddhist Churches of America)は、ハワイを除く全米に61の仏教会があり、私はそれらの宗教最高責任者という立場です。浄土真宗本願寺派の開教使として僧侶が日本から渡米をしてくるのですが、彼らをどこに駐在させるかを決めたりなどの事務的なことや、アメリカでの開教使養成などのプログラムの教育部門全体を監督したり、全米の寺院や大学、国連などでの講演も多数行っています。

その道に進むことになったきっかけ
 正直なところ、消去法です(笑)。私の実家はお寺なのですがそこは兄が継ぐので、父は私に「好きな道を歩んだら良い」と言ってくれていました。そこでいろいろと考えたのですが、満員電車に乗って通勤をするようなサラリーマンには向いていないな、と思って。高校2、3年の頃「仏教」というものを見直す気持ちになり、その時期に母方の叔父が「僧侶として海外に渡ってみたら」とアドバイスをしてくれました。今、その道を選んで本当に良かったなと思っています。

英語で仕事をするということ
 私は根が日本人ですし、価値観など根本的なところは英語で伝えづらいことはたくさんありますね。ただ、本当に大切なのは言語に関わらず「誠意を見せる」、「正直に生きる」ということだと思います。

英語で失敗したエピソード
 たくさんあります。中華料理店で貝を頼んだのにカニがきたり、聞き間違いなどは日常茶飯事です(笑)。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に
 図面を描いたりするのが好きなので、デザイナーです。私の父も祖父も絵を描くのが好きでした。血なのでしょうか、私の子どもも絵が好きで、今では映画の絵コンテを描く仕事に就いています。

あなたにとって仕事とは
 「自分の夢とやっていることが1つになる場」です。仕事を通じて、自分の心の奥にある想いなどを具現化していく。意味がないと思うような仕事でも、それを通じて自分の存在が認められるというのは嬉しいことですよね。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 小さい頃はタクシーやバス、電車の運転手。大きなものを動かすっていうのは、やはり憧れます。

いまの仕事に就いていなかったら
 僧侶として渡米をしても、どこかのお寺に入らずに自由に活動するというスタイルもあるので、今思うとそれも良かったな、と。また私が在籍したときにそういったポジションはなかったのですが、今は海軍にもチャプレンという専属の宗教者(従軍僧)がいて、今だったら従軍僧をやるのもいいなと思っています。

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 夜は12時に寝て、7時頃起きます。

休日の過ごし方
 土日の方が忙しくて、最近はあまり休めていません。いざ休みが取れてもいろいろな事を考えてしまって・・・逃れようと思っても、頭の中のスイッチを切ることができないんですよね。たまには気分転換にゴルフにでも行きたいと思っています。スコア云々ではなく、皆でわいわいとするのが楽しいですね。あと、昔は麻雀に凝っていました。結構、負けず嫌いなんですよ。

好きな場所
 今の自宅はとても良いロケーションで、サンマテオブリッジが一望できます。遠くにはサンフランシスコの町並み、ベイブリッジも見えて、何だか偉くなった気分です。

お気に入りのレストラン
 サンレアンドロにある「Titos」というメキシカンのお店と、ビーフカバブが美味しいグリーク料理のレストラン「Luke’s Grill」にも行きます。

1億円当たったとして、その使い道
 借金を払って(笑)、残りは夫婦で旅行に。海軍時代に住んでいたヨーロッパをもう1度ゆっくり周遊するのもいいですね。

最近日本に戻って驚いたこと
 普通帰るときは春か秋ですが、久しぶりに夏に日本に戻った時に、外に出ると何か大きな音が鳴っていたんです。何と、蝉の鳴き声でした。アメリカの生活が長いとこんなことすらわからなくなってしまうなんて、驚きでした。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 のりやしょうゆ漬けなどを持ち帰ってきます。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 景気が良くなってきたせいか、フリーウェイも混んできましたが、それほどありません。こんなに良い場所はないと思っています。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 ベイエリアというか、アメリカ全体に対してですが経済的にこの先どうなるのかというのは不安に思うところです。

お勧めの観光地
 レイクタホ。メンドシーノもドライブ中の景色がきれいでいいですね。

永住したい都市
 もちろん、ベイエリア。

5年後の自分に期待すること
 1人でも多くの方に仏教を受け入れて頂ければと思います。また、日本からアメリカに渡って来た人にも、もう少し仏教というものを見直していただければと思っています。

最も印象に残っている本
 西山深草『親鸞は頼朝の甥〜親鸞先妻・玉日実在説〜』。学術書ですが、大変興味深く面白い本でした。

最近読んだ本
 イザベラ・バード『日本紀行』。1800年代後半に日本を訪れたイギリスの女性が、初めて触れる日本文化などについて書いた本です。西本願寺についても書かれています。

最も印象に残っている映画
 『スパイダーマン』。娘が制作に携わっているので、妻と2人で映画館に出向いて、エンドロールで娘の名前を探しました。

自分を動物にたとえると
 象。象は仏教にも縁が深く、私が住んでいたことのあるオークランドの野球チーム、A'sのキャラクターでもあるので。

座右の銘
 「ともにこれ凡夫ならくのみ」。聖徳太子の言葉で、1人1人、それぞれただの人であり、特別な人間ではない、という意味の言葉です。同じような悩みを持って、同じように怒り、泣き、笑う。肩書きとかそういうものを抜きにして、皆が「凡夫(ただひと)」、普通の人間なのです。必要以上にかしこまることはありません。

(BaySpo 2013/08/30号 掲載)

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