一般編  Vol.190
トゥルー 本間 玲子さんさん
ジャパンタウンで心理カウンセリングオフィスを経営。東京外語大英米科を卒業後、UC Berkeleyで修士号取得。アライアント国際大学院で心理学博士号取得後、サンフランシスコ衛生局副局長としてアジア人、マイノリテイグループの精神保健と薬物治療プログラムを開発。関西大震災の際は被災者の心のケア設立に貢献。趣味は旅行、読書、ジャズとクラシック音楽鑑賞。
ベイエリアに暮らして今年で57年
サンフランシスコのジャパンタウンで臨床心理士としてカウンセリングオフィスを開いている本間さん。 1958年の渡米当時のベイエリアの印象、お仕事のことなどについてお伺いしました。
トゥルー 本間 玲子さんさん

(Reiko Honma True)BaySpo 1415号(2016/01/08)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 国際結婚をして1958年にSFに参りました。

ベイエリアの印象
 最初にサンフランシスコのジャパンタウンを訪問したときは大きなショックを受けました。第2次世界対戦中に強制収容所に入れられていた1世、2世が徐々に帰ってきてはいましたが、ジャパンタウンは生気が無く、荒廃した住居が目につきました。当時はアジア人の数も少なく、特に日本人やアジア人に対する反感もまだ残っていたので、不安な思いを持ったこともありました。また、日系社会ではまだアメリカの男性と国際結婚をした日本人女性をスティグマと見る人が多かったので、さらに孤立感を感じました。今はサンフランシスコだけでなくベイエリアは大きく変わりましたね。多文化の人種がどんどん増え、コスモポリタンで文化レベルも高く、素晴らしいコミュニテイになってきていると思います。多文化人種間の摩擦も少なく、お互い協力しあって生活できるし、日本やアジアの食材も豊富に手に入り、本当に住みやすい所だと思います。

自分の専門分野について
 ジャパンタウンで臨床心理士としてカウンセリングオフィスを開いています。英語が話せない日本の方で異文化社会で生活しながら、悩みやストレスを持っている方の役に立ちたいと思って開いたのですが、日系、アジア系米国人、白人、黒人など色々な人種の方々の相談を受けています。日本ではカウンセリングに抵抗を感じる方が多いですが、ここでは仕事のストレス、家族、友人との問題、うつ、不安、トラウマなどで悩んでいる方が気楽に相談に来ます。その前は、市の衛生局で副局長として精神保健、アルコール・薬物治療プログラムの管理をしていました。その時ベイエリアで日系人やアジア人のためのサービスが皆無だったので、有志の方々の協力を得て、市が直接経営するサービスやNPO団体を立ち上げました。SF地域で起こったローマ・プリータ地震の際に、被災者の心のケアサービスを組織した経験から、阪神淡路大震災や東日本大震災の際には、被災者の心のケア支援活動をさせて頂きました。また、去年までCSPP臨床倫理大学院サテライトキャンパスの学長として、日本の心理カウンセラー養成に関わっていました。

その道に進むことになったきっかけ
 日本の大学時代、教会を通して孤児院や幼稚園、病院でのボランティア援助活動をしていました。こちらに来て日本でやっていたことが大学院の修士課程を終了すれば、ソーシャルワーカーとしてやれると知り、カリフォルニア州立大学バークレー校大学院に入学しました。そのとき先生にすすめられて、精神保健分野を専攻したのが始まりです。まだ英語もしっかりしていない時で、大学院の勉強は大変でしたが、良い先生と上司に恵まれて多くのことを学びました。10年程仕事をした後、学びが足りないと感じ、臨床心理の博士課程に進み、3年後に臨床心理士の資格を取りました。

英語で仕事をするということ
 最初は英語の会話能力も限られていて、クライアントの深い心の悩みをしっかり聞いてあげられるか、つたない英語で癒しとなる話が出来るか大変不安でした。でも私がなんとかクライアントの役に立ちたいと思っている気持ちは伝わったようで、皆さん快く受け入れてくださいました。夢中で仕事をしているうちに英語も段々上達してきて、今では大分自信がついてきました。仕事や学校で学んだことは、英語が下手でも一生懸命に自分の考えていることを発言することです。日本では家族ばかりでなく、社会全体で女性はおとなしく控えめにするように躾けられてきましたが、こちらでは自分の意見をはっきり言えない人は低く評価され、無視されてしまい、やりたい仕事もやらせて貰えません。こちらで仕事をするためには、英語に余り自信がなくとも、自分の意見をはっきり言えるように努力することが大切です。

あなたにとって仕事とは?
 生活の支えとなる収入を得るために仕事をする必要がありますが、そのためばかりでなく、自分の能力で他の方に喜んでもらえるやりがいがあることです。常に新しい知識を学び、視野が広がり、同僚と仲良く協力しながらやっていける仕事があれば最高です。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 小さい時はあまり考えていなかったと思います。その当時は女性は結婚して、妻、母となることが期待されていましたので、職業のオプションはあまり無かったと思います。私が大学生時代に日本航空が設立され、欧米諸国と肩をならべて自国の飛行機を飛ばせるようになったのですが、その時に漠然とスチュワーデスになりたいと思いました。でも当時のスチュワーデスは花形職業で、私には可能性が無いと思いあきらめました。

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 約8時間は寝るように心がけています。起床時間は通常7時頃、夜は11時頃には寝るようにしています。私は朝早い方が元気が出るので、大切なことは午前中にやるようにしています。

休日の過ごし方 
 土日や休日はのんびりしています。土曜日には好きなヨガのクラスに行くように心がけています。その他買い物や友人達とランチをしたり、夕食に招待したりされたりします。そのほか家で映画を見たり、コンサートに行ったりしています。
1億円当たったとして、その使い道
 今年の夏に日本で、医療関係貢献者として『山上の光賞』という賞を受賞しました。賞金の100万円は新潟の精神障害者支援団体と、東京のCSPP臨床心理大学院に寄付して頂きました。1億円当たったとしたらすごく嬉しいです。一部を3人いる孫の教育資金として残す以外は、ベイエリアと日本で障害者の方達の援助をしている団体に寄付したいと思います。私はもう年を取っていますし、子ども達2人も自立しているし、お金がかかる欲しいものはあまりありません。こちらでも日本でも障害者援助サービスの運営資金は充分でないので、少しずつですが毎年寄付をするように心がけています。 

日本に戻る頻度 
 去年までは 東京にある臨床心理大学院に関係していたので、年2、3回は行っていましたが、リタイアしたので今年からは年に1度くらい帰るようにする予定です。日本には弟、妹達の家族や友人がたくさんいるので、身体が動ける間は戻るようにしたいと思っています。

最近日本に戻って驚いたこと
 日本も多少は不況から回復していると思うのですが、ホームレスの人たちの数が増えていることです。日本のホームレスの人たちはこちらのホームレスと違って、ひっそりと人に迷惑をかけないようにしているようで心が痛みます。行政はなぜもっと積極的に救済対策を作れないのかと歯がゆく思います。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 おせんべい、和菓子、梅干しなどこちらで手に入らない食品類や本を買って帰ります。

日本に郷愁を感じるとき  
 春の桜の季節や、お正月などには皆で楽しく過ごしたことを思い出して懐かしくなります。懐かしい日本のメロディーを聞いたときなども胸がシーンとします。

5年後の自分に期待すること
 5年後にはもう87歳になっていますので、出来るだけ健康に気をつけ、家族や人に迷惑をかけないで生活を楽しんでいきたいと思っています。

最も印象に残っている本  
 乙武洋匡著の『五体不満足』です。両手、両足が無い障害者として生まれたにも関わらず、力強く生きていくパワーに心をうたれました。彼を強い愛情でしっかり守って、障害に負けないように育て上げたご両親、先生達、そして友人達も素晴らしいです。

自分を動物にたとえると? なぜ? 
 猿に近いと思います。猿は仲間とグループで助け合ったり、喧嘩をしたりして行動していますが、私も仲間や家族と一緒に行動するのが一番うれしいタイプです。自然を自由にかけまわって、欲しいものや美味しいものを見つけたりするのも似ていると思います。

座右の銘
 クリスチャンだった母親が良く言っていた、「この世に生を受けている限り、少しでも世の中の役に立つことを心がけるべき」ということです。

(BaySpo 2016/01/08号 掲載)

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