一般編  Vol.283
今井 あゆみさん
1964年京都府生まれ。日本で助産師として10年間働いたのち、留学のため渡米。サンフランシスコで看護師(RN)として働きながら、UCSFで修士号を取得。助産師、ナースプラクティショナーの資格を取り、現在カイザーレッドウッドシティ メディカルセンターで助産師として勤務。
さまざまな「幸せのかたち」に 出会い、学ぶ
カリフォルニアで看護師(RN)の資格を修得、UCSFで修士課程を修了したのち、助産師として活動。日本よりも多様な患者が出入りし、さまざまな問題を抱えてもいるアメリカの医療・出産の現場で、人々と触れ合いながら日々邁進する今井さんに、ベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
今井 あゆみさん

(Ayumi Imai)BaySpo 1576号(2019/02/08)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 日本で助産師として10年間働いた後、海外で勉強してみたくなり、サンフランシスコ州立大学で全人的医療(ホリスティック医療)を学ぶため2000年に渡米しました。渡米前からアメリカで働いてみたかったので、就学中に独学で勉強し、カリフォルニア州の正看護師にあたるRegistered Nurseの資格にチャレンジして合格。以後、看護師(RN)として働きながら、UCSF(University of California, San Francisco)で修士を出て、米国助産師、および婦人科専門ナースプラクティショナーの資格を取得、2011年から助産師として働き現在に至ります。

ベイエリアの印象
 私が看護師として最初に働いたサンフランシスコ市内の病院は、違法移民、麻薬使用者、低所得者など、健康保険を持たない患者さんたちがたくさん来る病院でした。看護師として働き始めた最初の数年は、アメリカ社会の厳しい現実を目の当たりにし、衝撃の連続でした。ホームレスから超お金持ちまで、本当に色々な人々が共存している街です。助産師という仕事柄、日本ではあまり関わることのなかった同性カップルや性転換者の出産、代理母の出産にも携わり、多様な価値観、さまざまな「幸せのかたち」に出会い学べる素敵な場所だと感じています。

自分の専門分野について
 助産師は世界中に存在するのですが、働き方は国によってまちまちです。私の資格はCertified Nurse Midwife(CNM)といい、そのほとんどは病院に勤務し、妊婦健診、分娩介助、産褥ケア、帝王切開の介助、薬の処方などを行います。自宅出産やバースセンターでの出産を行うCNMもいますが、少数です。日本での助産師としての経験も含めれば、今まで3000人以上の赤ちゃんたちを取り上げてきました。

その道に進むことになったきっかけ
 医療の世界で働きたかったこと、どの国に行ってもできる仕事をしたかったこと、初めて見た出産でそのお産にも感動したけれど、それ以上に緊急事態に対処してテキパキ働く助産師が素敵に見えたこと、独立開業できる仕事がしたかったことが主な理由です。

英語で仕事をするということ
 アメリカに来た2000年当時は本当に聞き取りができなくて、スーパーのレジで『Paper bag or plastic?』と聞かれた時でさえ四苦八苦していたのを思い出します。仕事を始めた頃は、仕事場で電話が鳴るたびにコソコソと逃げていました。そんな私でも、今では医学部の学生の臨床指導にあたり、助産師や看護師の教育も行い、 出産準備クラスも担当し、指導者向け教育ビデオにまで出演して、本当によくやって来たと思います。今でも言葉のハンディを補う分、ネイティブの何倍も準備も勉強もします。 伝えたいことをどうすれば伝えられるのか、自分なりに工夫努力してやっていくだけです。

あなたにとって仕事とは?
 生き甲斐であり、楽しみであり、生涯続く学びであり、社会との架け橋であり、魂の修行の場であり、宇宙との繋がりであり、私そのものです。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 看護師です。小さな頃から病院でお世話になることが多かったのですが、痛い時や辛い時にそばにいて優しくしてくれる看護師さんは、大好きな存在でした。

いまの仕事に就いていなかったら
 パイロットになって世界中飛び回りたいです。私が育った時代には、日本で女性がパイロットになるという選択肢はありませんでした。今は女性の職業の選択肢が多様化して、素晴らしいことです。

休日の過ごし方
 オートバイが好きなので、夫とオートバイで走りに行っているか、キャンプやハイキングなどのアウトドアを楽しんでいます。写真を撮るのも趣味なので、カメラ片手に出かけることもあります。近年は、家でのんびりジャムやヨーグルトを作りながら本を読むのも楽しみになってきました。

最近日本に戻って驚いたこと
 日本の急速な国際化です。この5年ほどで本当に外国人労働者が増えましたね。最近大きな電気製品店では、必ずと言っていいほど中国や韓国から来た方々が働いているし、東京でラーメン屋さんに入ったら、麺を打っているのはインドの方でした。日本の国際化がどんな風に進んでいくのか興味津々です。

日本に郷愁を感じるとき
 最近日本人の患者さんが出産されて、日本からそのお母様が手伝いに来られていたんですが、生まれて来た赤ちゃんに「よう頑張ったね。えらかった、えらかった。元気に生まれて来てくれてありがとうね」と声をかけられていたのを聞いたとき、なんだか日本に帰りたくなりました。生まれて来た小さな命にも感謝する、こんな謙虚な優しさに触れることは、アメリカではなかなかないことなので。
現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 公共交通機関がもっと発達していればと思います。ベイを周回するようバートがつながればいいのに、と思います。近年のテックブームで、どんどん人口が増える一方、それに対応する基本設備が出遅れている感じがします。高速道路も日本なみに混雑していますよね。

現在のベイエリア生活で
不安に感じること
 医療の現場で働いていて言うのもなんですが、医療保険制度の貧困さです。保険に入っているにもかかわらず、抗がん剤の治療費が払えなくて、治療を続けるため吐き気止めを飲みながら働いている同僚、痛みに耐えながら専門医の診察を1カ月も待ち続ける友人、個人の破産宣告理由のナンバーワンは医療費が払えないから……。こんなのあまりにも酷くないですか?

お勧めの観光地
 カリフォルニアを南北に海沿いを延々と走るハイウェイ1。広大な太平洋と延々と続く海岸線を眺めながらのドライブは最高です。有名なモントレーやビッグサーに加え、サンルイスオビスポの広大な砂丘や北カリフォルニアの小さな漁港町、オレゴン州近くではレッドウッドの森の中を走ったりと、カリフォルニアの様々な顔に出会えます。

5年後の自分に期待すること
 健康でいることと、やりたい事にチャレンジし続けている事です。アメリカに来てからの19年間は仕事のために走り続けて来たので、これからは仕事を続けながらも、人生を楽しむ時間を増やして行きたいです。

最も印象に残っている本
 「最も」ではないのですが、最近読んだ本の中でJhon F. Cryan &Ted Dinan『The Psychobiotic Revolution』は面白かったです。腸内細菌や身体の中のバクテリアが、どのように人間の感情や精神状態に影響を与えているか、というテーマの本です。自分という人間は、何億もの他の生命体と生きている共同体なのだという事実は「自分」というものの定義について考えさせられました。

最も印象に残っている映画
 映画「Matrix」です。現実と認識しているものが実は現実ではないという発想、視覚効果、胸がスカッとするアクション、隅々まで格好良くできていて、今でも時々観ます。

座右の銘は?
 「天の目で見る」
 「楽しく生きる」

(BaySpo 2019/02/08号 掲載)

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