一般編  Vol.284
長谷川 浩之さん
1989年山梨県生まれ。東京大学経済学部卒業後、東京でオーガニック野菜のオンラインマーケットプレイス事業を創業。2014年渡米、SFにて日本人スタートアップシェアハウスTech Houseを運営。2017年にRamen HeroのKickstarterキャンペーンを成功させ、2018年より本格販売開始。
自分の作りたい
世界観を実現するために
2014年に渡米し、近年ラーメンミールキットのEコマース「Ramen Hero」を設立。あくなき挑戦心を胸に、ラーメンへの情熱と新しいビジネスへのチャレンジに燃える長谷川さんに、ベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
長谷川 浩之さん

(Hiroyuki Hasegawa)BaySpo 1579号(2019/03/01)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 高校卒業する頃から、いつかは米国で自分で会社をやってみたいと思っていました。ベイエリアに来たのは2014年で、その前は大学卒業後に創業メンバーとして別のフード系のスタートアップを東京でやっていましたが、その事業は失敗してしまい、次に何をするかを考えている中で、それまで一度も行ったことのなかったサンフランシスコ、シリコンバレーを見てみたいと思いはじめました。まずは1カ月ほど、少ない貯金が持つ範囲で目一杯滞在してみようと決め、初めて渡米。そこでAnyplace(anyplace.com)に取り組む内藤さんや、Chompの小林きよさんと出会いました。小林きよさんに「いずれ米国で起業しようと思っている」と伝えた際、「今すぐスタートしてみるのがいいと思うよ」という言葉をもらい、ベイエリアに移住しようと決意しました。

ベイエリアの印象
 街全体が実験室のような印象。新しい取り組みに寛容であると感じます。アプリやITサービスなどテクノロジーに関することだけでなく、新しい衣食住などのカルチャーに関するものについても抵抗なく受け入れ、試してみる人が多いのです。これまでにないものを創ろうとするスタートアップにとって、小さくコンセプトを試してみる場所としては、世界の中でもベストな場所ではないかと思います。

今の専門分野に進むことになったきっかけ
 幼い頃からラーメンが好きでした。東京に出てからは週5〜7日のペースで新しい店舗を回って、ラーメンの奥深さや食文化としての面白さにはまっていきました。ところが、米国に来てからというもの、ラーメンを食べに行く回数がめっきり減ってしまいました。それは、残念ながら食べに行きたいと思える店がほとんどなかったため。米国はラーメンブームと言われ、実際に爆発的にラーメンを提供する店舗が増えているにもかかわらず、実際にクオリティの高いラーメンを提供する店はごくわずかでした。また、数少ない美味しいと思える店には常に1〜2時間の行列ができていたんです。もっと本格的なラーメンを気軽に楽しめるように、アクセスしやすくする方法はないだろうか。そう考えた結果、東京でフードをオンライン販売するソーシャルコマース事業を作っていた経験と、米国でミールキットやオンラインでのフードデリバリーが普及し始め、今後も伸び続けるという確信があったことから、現在のラーメンミールキットのEコマースに辿り着きました。

あなたにとって仕事とは?
 自分の作ってみたい世界観を実現するための手段。こと事業作りは、あっちが揃ってもこっちがずれてる、全体が見えてきたけど必要なピースが足りない、といったことが多く、複雑なパズルを解いているような感覚です。もともと頭をちょっと使うゲームが好きなので、仕事は、目標を達成する手段ではあるものの、自分にとっては難しくてやりがいを感じる、面白いものだと思っています。

いまの仕事に就いていなかったら
 渡米当初、実は東京に戻ってとあるスタートアップでエンジニアになるべく修行させてもらう約束がありました。実力をつけて、数年後に米国に戻ってこようという考えでしたが、そうしていたら日本が心地よくなり、結局米国には戻ってこなかったのではないかと思います。現に、こちらに戻ってきて挑戦したいと言う人に数えきれないくらい会ってきたけれど、ほぼ誰も帰ってきませんでした。こちらで良い出会いやアドバイスにめぐりあうことができ、本当に幸運だったと感じます。

好きな場所
 バークレーのMonterey Marketには、最高に美味しい搾りたてのフレッシュジュースがあります。野菜や果物の質も高く、好きなきのこ類の品揃えも豊富です。食器にハマっているので、休日にはサンフランシスコのMM ClayとHeath Ceramicsなど、Localの食器ブランドを見に行きます。

最もお気に入りのレストラン
 サンフランシスコのNopa。野菜、魚、肉どれをとっても食材に拘り、味付けがあまり濃くなく、食材そのものの美味しさを楽しませてくれます。店もいつも賑わっていて雰囲気がいいです。

よく利用する日本食レストラン
 Tanpopo。ほっとするジャパンタウンの定食屋でよく通っていましたが、最近クローズしてしまい寂しいです。

日本に郷愁を感じるとき
 米国やベイエリアのほうが自分の性格に合っているので、郷愁を感じることはありません。ただ、インスタグラムで日本のラーメアカウントを多数フォローしているので、彼らのポストする美味しそうなラーメンの写真を見ると帰って食べたくなります。あとは、温泉や銭湯がとても好きなので、たまに日本に帰って入りたくなります。

5年後の自分に期待すること
 全米にRamen Heroを広め、No・1ラーメンブランドを作っていること。

最も印象に残っている本
 パウロ・コエーリョ『アルケミスト』。大学卒業後に就職でなく起業するという選択をする時に、背中を押してくれた一冊。繰り返し出てくる「人が本当に何かを望む時、全宇宙が協力して、夢を実現するのを助けるのだ」というフレーズがお気に入りです。スタートアップをするにしても、何をするにしても、仲間や周りのサポート、チャンスを掴める準備ができていることが必要だと思います。強く願っていれば自然と体が動くし、動いていれば自分を取り巻く人や環境や運が少しずつ変わってくる。そういうことを本質的に語っている本。

最近読んだ本
 新渡戸稲造『武士道』。以前にも何度か読みましたが、最近はRamen Heroがより多くの人に知ってもらえるようになり、以前にも増して自分がなぜこれをスタートしたのか? なぜ米国に来たのか? などのストーリーテリングを求められることが増えてきました。アメリカはあらゆる人種やバックグランドの人が集まっているため、自分のバックグラウンドや根底にある価値観をわかりやすく共有することが、ストーリーテリングの第一歩であると思っています。自分は日本人なので、日本古来の精神性に由来する価値観やものの考え方も当然もっているはずであり、それを理解するために手にとりました。

最近観た映画
 『Crazy Rich Asian』出演者が皆アジア人ということで話題になったハリウッド映画です。依然としてアジア系はアメリカではマイノリティで、人種に絡んだ様々な問題がありますが、こういう作品が出て大ヒットしたということはとてもempoweringなことだと感じます。エンターテイメントとしても純粋に面白い映画でした。

座右の銘は?
 「無制約、最短、合理的」。小林きよさんから教わった起業家としてのあるべき姿勢を、常に肝に銘じています。事業の成功を圧倒的に確信して、成功のためにすべきことをあらゆる制約を外して発想し、最短距離を考えて、意思決定をするときは合理的に。まだ完璧には程遠いけれど、これからも徹底してやっていきたいです。

(BaySpo 2019/03/01号 掲載)

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