一般編  Vol.317
枝廣 ナオヤさん
北海道札幌市出身。日本で建築金物メーカーに勤めたのち渡米。2005年よりサンフランシスコのデザイン事務所fuseprojectにインダストリアルデザイナーとして勤務し、さまざまな工業製品をデザインする。2016年に独立し、アメリカや日本などのクライアントと仕事をしている。サンフランシスコ在住。
デザインは、人生そのもの
日本で働いた後、渡独前の語学留学のために訪れたベイエリアでそのまま就職し、ベイエリア歴15年以上という枝廣さん。インダストリアルデザイナーとして生活者の生活がより良くなるデザインにこだわり続ける彼に、ここでの暮らしいついて伺いました。
枝廣 ナオヤさん

(Naoya Edahiro)BaySpo 1625号(2020/01/17)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 ドイツへワーキングホリデーに行こうと思っていたので、その前に英語力を身につけようと、2004年に知り合いのいるサクラメントに語学留学したのが渡米のきっかけです。その後英語力向上を兼ねてサンフランシスコのデザイン事務所でインターンシップをして、そのまま就職することになりました。結局ドイツへ行くことは諦めました。

ベイエリアの印象
 初めてサンフランシスコに来たときは、街にも職場にも外国人が多く、自分が外国人だということを気にする必要がなく、住みやすいと思いました。また、もともとアメリカに住む予定ではなかったのですが、都会すぎず田舎すぎず、気候がよく、食べ物も美味しいので、もう15年も住んでいます。しかし、ここ最近はシリコンバレーのテック企業で働く人達が増え、街の雰囲気が変わってしまって残念です。

自分の専門分野について
 電気製品や工業製品、家具などのコンセプトや使い勝手を考えたり、外観のデザインをするインダストリアルデザイナーという仕事です。例えば、お掃除ロボット「ルンバ」のS9という最新モデルをデザインしました。4年前に10年間勤めていたデザイン事務所を辞め、フリーのデザイナーとして、アメリカや日本、アジアのクライアントと仕事をしています。

その道に進むことになったきっかけ
 小さい頃から工作が好きで、NHKの『できるかな』を見たり、いろいろなものを作ったりしていました。中学生のころ車のデザインに興味を持ち、カーデザイナーという職業があることを知り、デザインの学校に行きました。在学中に車のデザインより工業製品のデザインに興味を持ちインダストリアルデザイナーになりました。

英語で仕事をするということ
 28歳のころに渡米したので英語はそれほど上手い方ではありませんが、大事な部分こそスケッチやデザイン画などでコミュニケーションする仕事なので助かっています。逆にネイティブスピーカーではないので、そこを逆手に取りネイティブスピーカーでは書きにくいお願い事などをさらっとメールで書いたりできます。

英語で失敗したエピソード
 インターンシップをしていたデザイン事務所が非常にカジュアルな職場だったので、みんな汚い言葉も普通に使っていたのですが、自分が上司に対して怒ったときに、ついFワードを使ってしまい、上司も同僚も固まってしまいました…。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 同じデザインの仕事をしていたと思います。外国語として中国語を勉強していたら、中国出張が楽になっていただろうなあと思います。

あなたにとって仕事とは?
 学生時代からずっとデザインに関わっているので、人生そのものだと思います。クライアントや消費者が気づかないような小さなディテールも、少しでもデザインがよくなるように考えるので、自分の仕事はボランティアみたいだなあとよく思います。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 手を使って何か作ることが好きだったので、大工さんになりたいと思っていました。

いまの仕事に就いていなかったら
 手先が器用なので外科医になれたんじゃないかと、日本の医療ドラマを見るたびに思います。

現在、住んでいる家
 ミッションにあるワンベットルームのアパートです。BARTの駅から近く、窓が大きく日当たりがいいので、とても気に入っています。

乗っている車
 アウディです。サンフランシスコは車が増え路上駐車が難しくなってきたので、あまり運転しなくなりました。

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 朝7時ころ起きて、12時ころ寝ています。

休日の過ごし方
 独立してからは、週末も仕事をしないといけないくらい忙しいのですが、仕事が忙しくないときには旅行に行き写真を撮ります。スキーが好きなので、冬は雪が降ればパウダースノーを滑るためにタホに行きます。

最もお気に入りのレストラン
 Pizzeria Delfina。住んでいるアパートから近いというのもあり、美味しいピザが食べたくなったら行きます。ここの美味しいピザ生地は小売りもしてくれるので、買って家で焼くこともあります。

よく利用する日本食レストラン
 Izakaya Rintaro。美味しい日本食が食べたくなったら、ちょっと高いですが食べに行きます。

日本に戻る頻度
 出張も含めて1年に3〜4回ほど帰っています。

最近日本に戻って驚いたこと
 デザイン料を120日の約束手形で支払うと言われたことです。いまだに手形が使われていると知り驚きました。

日本に持って行くお土産
 最近は、ローカルのコーヒー豆やTrader Joe’sの面白そうなお菓子、Mietteのきれいな色のお菓子などを持って行きます。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 AKOMEYAのちょっといい食材や、スーパーなどで売っている食材と混ぜておかず作るレトルトのもの。種類が豊富で簡単に作れるので少し重いですが買って帰ります。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 人が増えてきたので、人気のレストランやカフェが混んでいて簡単に入れなくなってきたのは残念です。また、道路やハイウェイが渋滞していて移動に時間がかかったり、路上駐車が大変なことです。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 物価が高くなったり、ホームレスが増えてきたり、これからどうなるのか不安です。

日本に郷愁を感じるとき
 ベイエリアには四季がないので、日本の四季のニュースなどを見ると日本はいいなあと思います。あと、寒くなると温泉に入りたくなります。

お勧めの観光地
 ヨセミテ国立公園は、いつ行ってもいいと思います。冬は寒いですが、雪が降ったあとの公園もとてもきれいです。

永住したい都市
 出身地の札幌です。周りに自然がたくさんあり、適度に都会で、食べ物が美味しいです。国際線の飛行機も飛んでいるので、仕事にもそれほど困らないのではと期待しています。暖かいベイエリアにくらべると、冬がとても寒いのが難点ですが。

5年後の自分に期待すること
 どこかに自分のデザイン事務所を構えたいです。

最近読んだ本
 最近は仕事の資料以外で本は読んでいません・・・。

座右の銘は?
 「為せば成る」。
一生懸命やっていればそのうちその通りになると思って、なんでもやっています。常にプランBも考えていますが、意外と上手くプランAの通り行くものです。

(BaySpo 2020/01/17号 掲載)

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