ベイエリアに住むことになったきっかけ 2015年に出産を控えて、息子の父親の出身地であるサンフランシスコに引っ越してきました。現在はバークレーで暮らしています。
ベイエリアの印象 変化が激しく、新しいものや動きが次々と生まれていく街。光も闇も濃いと感じます。経済格差や地価の高騰などの問題もありますが、新しい生き方、新しい経済のあり方、新しいサービス、新しい教育などを模索・実践している人が多く、ワクワクします。ベイエリアには本当に多様なバックグラウンドの人々が暮らしており、自分が「外国人」とはあまり感じません。私の専門である食・農業の分野では特に先進的な動きが多く、刺激が多いです。1960年代からのオーガニックをはじめとする食・環境のムーブメントのおかげで、「オーガニック」や「ヴィーガン」の食品が当たり前の選択肢として手の届く範囲に存在していることも面白いです。社会問題や環境問題について、人々の意識が高いと感じます。
自分の専門分野について 現在の地球上に存在する、多様な植物の「種子」を未来に継いでいくための研究・活動をしています。生物はお互いに支え合い、生かし合って存在しているので、種(しゅ)の多様性はとても大切です。
普段は、伝統的な種子を守るためにどのようなことができるか、また地球環境にとって良い影響をもたらす食や農業のあり方はどのようなものか、といったことをテーマに、研究・講演・執筆・ワークショップなどを行なっています。去年からはオンラインの講義も開始し、撮りためた動画をこれから順次公開していこうと思っています。他にも、通訳や翻訳(こちらは分野問わず)、ベイエリアの農・食分野ツアーのコーディネートやアテンド、週末のファーマーズマーケットでお味噌などの発酵食品の販売、子供向けの教育プログラムの開発、政策立案サポート、種子を使ったアクセサリーづくりなど、いろいろなことをしています。
その道に進むことになったきっかけ 自然な成り行きだったと思います。幼い頃から、「自然」と「人間」の関係性について考えてきました。オタク体質なので、何かをとことん調べたり、情報を整理してまとめて、発表したりする作業が好きでした。大学に入って、知識を思う存分探求できる環境が得られた時、水を得た魚のようになった心地がしました。気がついたら農業政策の調査のためにアフリカにおり、気がついたらヨーロッパで論文を書いていて、気がついたらアメリカで知識を広める立場に立っていました。
;英語で仕事をするということ
自分の専門分野に関しては、英語の方が得られる情報が多く、研究を行う上で英語を扱うことは必然の流れでした。
英語は、幼い頃に3年間アメリカで暮らしていたことがあり、その時に感覚としての英語(発音など)を身につけました。本格的に海外生活が始まったのはオランダで暮らし始めた2013年からで、日本を発った当初はTOEFLのスピーキングのスコアが最低点でしたが、海外の研究所で切磋琢磨されたら一年間で満点になっていました。とはいえ、しばらくは自信が持てず、英語で話す場面では言葉数が少なくなってしまいがちでした。英語で研究発表をしたり、ラジオに出たり、ワークショップの講師を務めたり、通訳をしたり、お味噌を売ったり、友達が増えたり、「英語で話さざるを得ないような」機会の場数を踏んでいく中で、徐々に自信がついて行きました。そもそも家庭内が多言語の飛び交う異文化交流の場なので、かなり鍛えられました。
通訳は、言葉を単純に訳すだけではなく、コンテクストや意図や雰囲気を伝えることを大切にしています。異なる文化圏の橋渡しをすることは、とても楽しい作業です。楽しんで通訳をしていることが伝わるのか、周囲からも好評をいただきます。
英語で失敗したエピソード 大きな失敗は思い出せませんが、日本語のフレーズを英語に直訳しても意味が通じないケースがあったり、微妙なニュアンスの差が理解できない場面などはありました。
また、日本流のコミュニケーション(空気を読む・調和を大切にする・相手を立てる・立場の違いを大切にする・自分のことは謙遜する・etc)と、欧米圏でのコミュニケーション(空気をあまり読まない・すべて明言化する・自己主張をしっかりとする・自分を卑下しない、等)の切り替えに最初は苦心しました。日本流で対話すると欧米では通用しづらく、欧米流で対話すると日本では角が立つように感じます。こちらは次第に慣れて切り替えられるようになりました。
英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に? 変わらないです。現在の仕事が天職だと思っています。
あなたにとって仕事とは? 生きることです。自分がこれをするために生まれてきたということを、していくことです。誰でも、多かれ少なかれ、そのことに関わっていると胸が高鳴る、エネルギーが無尽蔵に湧いてくる、明らかに向いている、というものがある気がします。そのことに本当に愚直に取り組んでいると、必要なご縁も機会もリソースもついてくると信じています。
いまの仕事に就いていなかったら 普段から百姓のような生き方(様々な仕事を同時に行う)をしているので、他の仕事への憧れはないです。今の暮らしが気に入っています。
最もお気に入りのレストラン 有名どころですが、バークレーのChez Panisseというレストランはコンセプトも食事も何もかも素晴らしいです。その近くのFAVAやCheese Boardも好きです。ベイエリアに暮らすネイティブアメリカンのオローニ族の食事を再現したカフェ、Cafe Ohlone by mak-'amhamも大好きです。オローニ族の歴史や神話や文化に触れることができます。シェフたちが収穫したどんぐりで作られた、どんぐりのポリッジがとても美味しかったです。
毎週土曜日にお味噌屋さんで働いていることもあり、非常に美味しい日本食を普段からいただいているので、日本食レストランにはあまり行く機会がないです。オークランドの「そばいち」に行ってみたいです。
現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき 家賃と物価が高いです。バスや電車が日本のようには定刻には来ず、また、そのことについて運転手も駅員も誰ひとり悪びれないです。
お勧めの観光地 San Francisco Ferry Building Farmers Market サンフランシスコのフェリービルのファーマーズマーケット。毎週土曜日のマーケットはサンフランシスコ最大規模で、カリフォルニア中から素敵な方々が出店しています。新鮮な季節の野菜や果物、花、加工食品、魚介・肉類、お酒やお菓子、ギフトなどが、お祭りのような会場に所狭しと並んでいます。見たことのないお野菜や果物もあって、面白いです。この前は中南米のチェリモヤという果物を食べました。私もAEDANというお味噌屋さんでお味噌と麹製品の売り子をさせていただいています。近年は発酵食品がとても流行っているので、有名レストランのシェフや健康志向の方や発酵好きの方々などが多く訪れます。
永住したい都市 これまでの人生、北米、アフリカ、ヨーロッパと、転々と暮らしてきました。幸せに暮らすことができて、良いお仕事ができれば地球上どこでもいいです。自然が豊かな場所、特に海とジャングルが好きです。これまでに行った場所では、ハワイ島と沖縄が好きです。
5年後の自分に期待すること 元気で楽しくハッピーに暮らしていて欲しいです。自分の仕事が社会への貢献になっていれば嬉しいです。